人権問題を扱う国連の「恣意的拘禁作業部会」が、外国人を長期収容する日本の入管収容制度は国際法違反だと指摘する「意見書」を、日本政府に送ったことが分かった。長期収容されていた外国人男性2人の訴えを受け、作業部会に調査を依頼していた弁護士らが明らかにした。同作業部会が日本の入管収容を明確に「国際法違反である」と指摘したのは初めてだという。
作業部会が審査をしていたのは、難民申請中のトルコ国籍でクルド人のデニズさんとイラン国籍のヘイダー・サファリ・ディマンさんの二人の処遇。長期収容中の昨年10月に、個人通報制度を利用して、同作業部会に、2人の人権状況に関して調査を依頼。日本政府からの回答や2人の反論をもとに、今年9月23日に「意見書」がまとめられた。
「意見書」では、2人が理由や収容期限が不明なまま、10年以上にわたって、断続的に長収容が繰り返されてきたことについて、「法的根拠を欠く恣意的な収容」と指摘。世界人権宣言や国際人権規約の複数の条文に違反すると結論づけた。
また日本政府に対し、権利を侵害した責任者に対して適切な措置を講じるようにもとめるとともに、入管法の速やかな見直しを要請。さらに利用可能なあらゆる手段を用いて、可能な限り広くこの「意見書」を発信するよう求めている。
現在仮放免中のサファリ・ディマンさんは、「人間として扱ってもらえて、本当にうれしい」「3年8ヶ月収容されているときは、本当に辛かった。本当に死ぬと思ったこともあったし、こんなことが日本で起きているとは信じられなかった。51年生きてきて、こんなみじめなことは初めてだった。」と声を震わせた。
また日本の人に伝えたいことはとの問いに対し、「長期収容されているのは、ほとんどが難民。みんなそれぞれ理由があって帰れないのであって、犯罪者ではない。中にいる人は、家族や子どもがいて、みんな大変なので、1日も早く出て欲しい」と訴えた。
国際法に詳しい小川隆太郎弁護士は、「日本は、「人身の自由」に対する位置づけが他の国と異なる。」として、精神医療の措置入院や刑事施設での人質司法など、身体拘束がまかり通ってことを批判。「重きを置くべきだ」と指摘した。
現在、政府は入管法改正を検討しているが、2人を支援してきた駒井知会弁護士は、収容を前提とした従来の方針を一切見直していないと批判。収容期間を明示したり、収容の際に司法審査を経るような、抜本的な見直しが必要との考えを示した。