東京電力福島第一原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」あり方を議論している検討委員会の第34回目会合が8日、福島市内で開催された。甲状腺検査により穿刺細胞診で悪性ないし悪性疑いと診断された患者は、5人増えて212人となり、そのうち169人が手術を実施。1巡目で良性結節と診断された1人を除く168人が甲状腺がんと診断された。
4巡目で初の甲状腺がん疑い症例
今回、公表されたのは、昨年末までの3巡目と4巡目のデータ。それによると、3巡目で穿刺細胞診を実施し、悪性ないし悪性疑いと診断された患者が3人増えて21人となった。新たに手術を受けたのは2人で、それぞれ甲状腺乳頭がんと診断された。この結果、3巡目で15人の患者が甲状腺がんと確定した。また、4巡目でも初めて穿刺細胞診により2人が甲状腺がんないし疑いがあると診断された。この2人はまだ手術は受けていない。
2年おきに実施されている1巡目から4巡目までの検査結果と、20歳以上の年代が受ける節目検診の結果を合わせると、これまでに212人が穿刺細胞診で悪性ないし悪性疑いと診断され、うち168人が甲状腺がんと確定した。また昨年7月に公表された、福島県立医科大学で手術を受けた集計外の患者11人を含めると、悪性ないし悪性疑いは223人、甲状腺がんと確定している患者は179人となった。
県は甲状腺がんとなった患者等の治療費を給付する「甲状腺検査サポート事業」の新たな交付実績も公表した。これによると、昨年12月末までに医療費を交付した人数は252人で、手術費用の交付を受け95人のうち87人が甲状腺がんと診断された。しかし、交付を受けた252人が年齢や性別、穿刺細胞診などの結果や腫瘍径などが明らかにされず、検討委員会で公表されている検査結果と突合することも一切行なっていない。
これに対し、環境省の梅田珠美保健福祉部長は、新たな項目が公表されたことは評価しつつも、分析して評価ができるまでには不十分だと指摘。「サポート事業は(甲状腺がんを)悉皆に把握できるものではないということはその通りだが、18歳を超える方々については、この診療情報を捕捉できる。」と発言。「どの時点からか分からないが、報告されている手術症例は医大からのものに限定されてしまった。評価部会で分析するデータには、サポート事業のデータも活用してほしい。」と苦言を呈した。梅田氏がサポート事業の診療情報の集約や開示について言及するのは、これで3回目。
妊産婦検査は見直しへ
この日はこのほか、妊娠や出産した母親の健康状態を把握する「妊産婦検査」と避難指示区域の住民の健康状況を把握する「健康診査」のデータも公表された。「妊産婦検査」では、事故直後のような不安傾向は低下しており、一定の役割を果たしたと評価。今後、国の調査との関係を整理し、調査のありかたを再検討することが確認された。
配布資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-34.html
記者会見では、福島医科大学の志村浩己医師が前回の「甲状腺検査評価部会」で報告した解析データをめぐり、記者が不自然な解析結果が存在すると指摘。見解を求めたが、鈴木元部会長は「指摘は受けとめた」とする一方、報告そのものを否定するものではないと述べ、査読つきの論文誌に掲載されるまで、解析対象となっている数字を公表することは難しいとの見解を示した。次回の甲状腺検査評価部会までに正しいデータを公表するという。