伊達市民の個人線量データを解析したいわゆる「宮崎・早野論文」を専門家らが検証した結果、一定程度の住民が生涯線量で100ミリシーベルトを超えることがわかった。検証結果は3月26日発売の「科学」(岩波書店)に掲載された。
検証を行なったのは、高エネルギー加速器研究機構の黒川眞一名誉教授とローマ大学トル・ヴェルガータ数学科の谷本溶氏。福島県立医科大学の宮崎真講師と東京大学の早野龍五名誉教授が2017年に投稿した2つ目の共著論文について、黒川氏と谷本氏が検証したところ、99パーセンタイル値とされていたものが、実際には90パーセンタイルであると指摘。これに基づき、35ミリシーベルトにとどまるとされていた住民の生涯線量を早野氏らの論文と同じ手法で再計算したところ、99パーセンタイルは103ミリシーベルトに達することが判明した。
避難を考慮せず、過小評価と批判
このほか検証論文では、データから、同地域の住民の半数程度が避難をしていたとみられると指摘。「避難勧奨地点」に指定され、避難した住民が多かった事実を明記せず、生涯線量が半分程度過小評価されていると批判した。さらに、早野氏らの論文では「除染に効果はない」と結論づけているが、データから、個人被曝線量率で22% ほど低減効果があることは明らかであるとして、論文の結論を否定した。
早野氏はOurPlanetTVの取材に対し「お問い合わせのような件も含め、東大の調査等の範囲かと思いますので、現時点で個別の対応はご遠慮いたしたい存知ます(原文ママ)。」と回答した。また宮崎氏が所属する福島県立医科大学の広報は、「ご連絡いただきました件につきまして、現在本研究に関する本学調査が行われており、論文の内容についてのコメントは差し控えさせていただきます。」としている。
岩波書店「科学」
https://www.iwanami.co.jp/book/b450386.html