本人の同意を得ずに、福島県伊達市の全住民の被ばく線量を解析していた「宮崎早野論文」問題をめぐり、研究不正調査の結果を問う東京大学出身の研究者らが9月14日、「科学の健全な発展を望む会」を結成し、科学コミュニティの問題を考えるオープンフォーラムを開催した。
メンバーの一人、高エネルギー加速器研究機構の黒川眞一名誉教授は、東京大学で研究不正調査が行われた「宮崎早野論文」の解析や調査について講演。同論文には様々な問題が多数含まれているが、東大が十分な調査を怠っているとして、「日本の科学は危機的状況にある」との認識を示した。
また慶応義塾大学の濱岡豊教授は、「個人線量測定」をテーマにした「宮崎早野論文」以外の論文を取り上げ解説。統計学の立場からみると、解析対象の代表制や解析方法に問題があると指摘した。
神戸大学の牧野淳一郎教授は、2011年3月の専門家の言動から、宮崎早野論文が生まれた経緯を検証。多くの専門家が事故直後から、市民の不安を低減するために、事故や被曝を過小評価してきた事実を紹介し、専門家の抱える問題について述べた。
牧野淳一郎教授のスライド
第2部アーカイブ
第2部では、市民との質問に答える形式で、ディスカッションを行った。市民からは、「空間線量と個人線量計は目的が異なるはず」といった意見や、「宮崎早野論文」が誕生した背景などについて質問が相次いだ。
科学の健全な発展を望む会
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