(映像提供:綿井健陽)
あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」が展示中止となっている問題で9月10日、参加アーティストが新プロジェクトを立ち上げた。9月10日に日本外国特派員協会で行われた記者会見には、映像作家の小泉明郎さん、アートユニット「Chim↑Pom」代表の卯城竜太さん、演劇監督の高山明さん、アートユニット「キュンチョメ」のホンマエリさん、「表現の不自由展・その後」に作品を展示していた大橋藍さん、アーチストの加藤翼さん、藤井光さん、村山悟郎さんが参加。表現の自由の完全なる回復を目指したいと訴えた。
新たにスタートするプロジェウトは、「ReFreedom_Aichi」。「表現の不自由展」や、「表現の不自由展」の閉鎖に抗議して取り下げた全ての展示の再開を目指す。具体的には、アーティストが県職員に代わって抗議の電話を受ける演劇プロジェクト「アーティスト・コールセンター」の設立をはじめ、「#YOurFreedom」のハッシュタグをつけて、それぞれの不自由を投稿してもらうSNSを活用したプロジェクトなどを展開。それぞれのアクションを通じて、閉鎖された全作品の再開を目指す。現在35組のアーティストが賛同を表明しているという。
「表現の不自由展」の閉鎖を伝える掲示(左)検閲に抗議し展示を変えたレニエール・レイバ・ノボの作品(右)
あいちトリエンナーレに作品を出品し、「表現の不自由展」でも展示されていた映像作家の小泉明郎さんは会見で、「「表現の自由」への責任は、多数の死という犠牲の上に成り立ってきた。」と述べたいうえで、「表現の自由は言論の自由に直結している。私たち1人ひとりが、自分の人生を自分で決めるという自由にも直結している。あいちトリエンナーレで起きていることは、この自由がここで崩壊するのか、それともここでそれを食い止めるのか。その分岐点にある」と力を込めた。
アーチストがコールセンター?
立ち上げるプロジェクトとしてユニークなのが演劇ユニットPort Bのリーダーで演劇監督の高山明氏が主導するプロジェクト「コールセンター」だ。「表現の不自由展」に引き金になった一つに、避難する市民からの電話が県の各所にかかってきたことがあるが、これをアーチストが引き受けるというプロジェクトだという。コールセンターでの応答を通じて、「公共性」に対する考え方を整理し、他の美術展等でも利用できるようマニュアル化するという。
一方、「#YOurFreedom(ユーアワーフリーダム)」 は「世界中の不自由の声を集める」という試みだ。観客やSNS利用者に、自身が抑圧された経験を付箋紙に書き、SNSに投稿してもらう。付箋紙に書かれたメッセージは、現在閉じられている展示室の扉に貼っていくという。
#YOurFreedom プロジェクト
企画したアートユニット「キュンチョメ」のホンマエリさんは、「必ず不自由でいっぱいになった閉じられた扉を開けなくてはいけない」という。鑑賞者が過去に受けたセクハラや性差別体験を付箋紙で書いてもらい展示するという観客参加型プロジェクト「The Clothesline」を展示していたモニカ・メイヤーさんの作品コンセプトを引き継いだという。
モニカ・メイヤーさんの「The Clothesline」(2019年8月5日撮影)
メイヤーさんの作品は、なごやとえりエンナーレで、津田大介芸術監督がジェンダー平等をかかげるきっかけになった作品だが、モニカさんは「不自由展」の閉鎖をうけ、鑑賞者のコメントが記載されていない付箋紙が部屋の散らばっている内容に変更した。人々が声があげられない状況を表している。
「不自由展」の閉鎖に抗議し、記載のない付箋紙だけが部屋の散らばる内容に変更した。(2019年8月25日撮影)
トリエンナーレが終わる1ヶ月前の9月14日には、トリエンナーレの街中展示を行っている名古屋市円頓寺本町商店街内のアーティスト・ラン・スペース「サナトリウム」で、「#YOurFreedom」のワークショップを行う。「サナトリウム」ではこのほか、研究者やキュレータなどの講演会なども開催し、あいちトリエンナーレの展示中止問題について議論する場を持つ。
まちなか展示が行われている円頓寺商店街
ReFreedom_Aichi
https://www.refreedomaichi.net/
クラウドファンディング
https://camp-fire.jp/projects/view/195875
9月14日(土)#YOurFreedomワークショップ
9月22日(日)遠藤水城(キュレーター)トーク
9月24日(火) 國分功一郎(哲学者)x 木村草太(憲法学者)
9月30日(月)毛利嘉孝(社会学者、東京藝術大学教授)トーク
住所 愛知県名古屋市西区那古野2-10-10