東京電力福島第1原発事故後に京都府に避難するなどした57世帯174人が、東電と国に総額約8億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、京都地裁であった。浅見宣義裁判長は、津波を予見できたのに対策を怠ったとして、国と東電に対し、計約1億1千万円の賠償を命じた。
国の賠償責任を認めたのは前橋、福島両地裁に続き3例目となる。京都訴訟の原告は、避難指示区域に指定されている島県富岡町の1世帯1人を除き全て区域外の「自主避難者」で、福島市、郡山市、いわき市、会津三里町といった福島県内のほか、宮城県仙台市や茨城県北茨城市、つくば市、千葉県松戸市、柏市など、首都圏の住民も含まれている。
千葉の避難者にも損害賠償
判決では、「低線量被曝に関する科学的知見は、未解明の部分が多く、LNTモデルが科学的に実証されたものとはいえず、1ミリシーベルトの被曝による健康影響は明らかでない」などとして、「空間線量1ミリシーベルトを超える地域からの避難および避難継続は全て相当である」とする原告の主張を認めなかった。
その一方で、年間20ミリシーベルトという国の避難基準について一定の合理性を認めながらも、避難の相当性を判断するのは基準にはなり得ないとして、「自主避難者」らがそれぞれリスクを考慮して避難を決断することはありうると結論づけた。
その上で、仙台市と茨城県つくば市から避難した3世帯を除く、全ての世帯に対して「避難の相当性」を認め、「自主避難者」に対する賠償額をこれまで国の損害賠償紛争審査会が中間指針で示していた金額を上回る賠償を認め、原発から190キロ離れた千葉県松戸市や柏市から避難した家庭へも、一世帯300〜400万円前後の損害賠償支払を命じた。