小児甲状腺がん
2018/02/04 - 17:40

新潟県で福島原発事故の健康影響の検証本格化

新潟県は5日、東京電力柏崎刈羽原発の再稼動を巡り、福島第一原発事故による健康影響を検証する「健康分科会」の第2回会合を開いた。福島県が行っている「県民健康調査」や甲状腺がんについて、委員の意見が対立。今後、国や福島県の報告書にはないような資料も含めて、独自の検証を進めていく方針だ。

会議ではまず、獨協大学の木村真三委員が、放射線による被曝影響だけでなく、メンタルヘルスなど、原発事故がもたらす健康影響を包括的に議論しなければ事故の矮小化に繋がると指摘。新潟青陵大学の鈴木宏座長も今後、議論の枠組みに入れるのか知事の考えを確認していく方針を示した。

甲状腺がんをめぐり意見白熱

最も時間をかけたのは、福島県「県民健康調査」や甲状腺がんをめぐる議論だ。新潟大学の中村和利委員は、福島での検診をめぐり、「過剰診断」や、「検査の不利益」といった議論があることを指摘。さらに新潟大学の青山英史委員は、福島県「県民健康調査」検討委員会の中間とりまとめを参考に、甲状腺がんは生命予後のよいがんであるとの立場に立った。

これに対して、鹿児島大学の秋葉澄伯委員は「本当に過剰に見つけているのか、福島県立医科大学は認めてないんじゃないか」と指摘。他の地域で原発を再稼動する際には、事故後、子どもたちの内部被曝を把握出来るようにする検査体制の準備をするべきでないかと提案した。

資料5 福島県「県民健康調査における中間とりまとめ」
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai.html

木村委員は、自身が視察しているチェルノブイリ原発事故後のベラルーシや、ウクライナの経験を話して、甲状腺がんは進行性の遅いがんで、予後の良いがんであるとの話を否定。「原発事故由来の甲状腺がんは違うもの。チェルノブイリを視察している臨床医を加えて議論しなければいけない」と訴えた。また、福島県「県民健康調査」については、受診率の低下や、「経過観察」後に甲状腺がんと診断された患者の症例把握が出来ていないことを説明し、福島県の検査結果の発表方法に疑問を呈した。

鈴木座長は、メディアの取材に対して、今後チェルノブイリ原発事故に関わる資料なども集めて、国や福島県の報告書にないような独自の検証も行うとの方針を示した。

新潟県「健康分科会」とは

この分科会は、新潟県の米山知事が選挙公約に掲げていた福島第一原発事故を検証する検証委員会の中のひとつである「健康と生活への影響に関する検証委員会」に昨年8月に設置されたもの。柏崎刈羽原発は原子力規制委員会による適合性審査に合格しているが、米山知事は、検証が終わらなければ再稼働は議論できないとしている。検証委員会は、今後それぞれ年に4回程度の頻度で開催されて、3~4年後に結果を取りまとめる方針だ。

新潟県「健康分科会」メンバー
委員:青山 英史 新潟大学医学部 教授 放射線医学
秋葉 澄伯 鹿児島大学 名誉教授 疫学・公衆衛生学
木村 真三 獨協医科大学 准教授 放射線衛生学
鈴木 宏 新潟青陵大学 副学長 疫学・公衆衛生学(座長)
中村 和利 新潟大学医学部 教授 疫学・予防医学(副座長)

会議資料
http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/813/595/180205kenko-siryou_150507.pdf

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