2019/02/21 - 05:00

横浜地裁、5例目の「国の責任」認める判決~原発避難者訴訟

東京電力福島第1原子力発電所事故で、福島県から神奈川県へ避難した175人が国と東京電力に総額約54億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、横浜地裁であった。中平健裁判長は、「2009年9月時点で津波の予見ができた」として、国と東電の責任を認め、約4億1963万円を支払うよう命じた。原発事故をめぐる集団訴訟で国の責任を認める判決は5例目となった。

この裁判は、福島県から神奈川県に避難した60世帯175人が原告となり、国と東電に対して、避難生活に伴う精神的苦痛に対する慰謝料や、ふるさと喪失の慰謝料など総額約54億円の損害賠償を求めて、2013年に提訴していたもの。

判決で、横浜地裁の中平裁判長は、2009年9月の東電の報告書により、福島第一原発の敷地高を超える津波の到来を予見できたとして、電源設備の移設をしていれば「1号機の水素爆発は回避できた」と指摘。国の責任について、東電に規制権限を行使しなかったのは「著しく合理性を欠く」と違法であると認定した。

裁判のもう一つの焦点だったのが、避難指示区域外からの自主避難者への賠償だ。判決では、原告が主張した、被ばくによる健康影響にはしきい値がないとする「LNTモデル」について、「無被ばく者が、従前の被ばく量をわずかでも超える被ばくをすれば、がん発症ほか健康上の影響を受けるということまで統計的に実証したものではない」と認めなかった。

一方で、国が「100ミリシーベルト以下の被ばくでは影響が小さく。損害は生じていない」と主張したことについても認めず、「事態を受忍して生活を続けることは精神的損害がある」と中間指針が定める賠償額では不十分であると認識を示した。自己決定権の侵害慰謝料として、原則1人30万円、子ども・妊婦は100万円などの慰謝料を認めた。

原告団の黒澤知弘弁護士は「国の責任が5回も断罪された。国はこれ以上争うな」と訴えて、国が中間指針等の見直しを行い、被害者への完全賠償をすることを求めた。福島県南相馬市から避難した原告団長の村田弘さんは「裁判の結果は8分か6分咲きだが、一歩でも前進できた。住宅支援の打ち切りなど現在進行形の問題がある。避難者は追い込まれている」と語った。

関連サイト
福島原発かながわ訴訟を支援する会
https://sites.google.com/site/fukukanaweb

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