オリンピック
2019/05/28 - 00:00

五輪の建設現場ですでに3人死亡〜国際労組も警鐘

新国立競技場や選手村など、五輪競技場の建設現場で、工事着工から昨年末までの1年9ヶ月の間に、建設工事にあたっていた作業員3人が死亡していることが、厚生労働省と東京都の取材でわかった。また大怪我をして労災認定を受けた労働者は12人。国際的な労働組合であるBWI(国際建設林業労働組合連盟)が今月14日に「東京五輪の闇」と題する報告書を公表し、「危険な労働環境」だと警鐘を鳴らしたばかり。五輪建設現場で何が起きているのか。

「建築資材がクレーンで吊りさげられた、そのクレーンの下で作業が強いられた。強風が吹けば、ブルンブルン揺れるんだ。そうと訴える作業員もいました。」
「新国立競技場では検査をするために、仮設の照明器具を撤去することとなり、真っ暗な中で作業をしいられ、足を6針も縫う怪我をした作業員もいる」

そう話すのは、BWIの依頼で、新国立競技場や選手村の労働者40人に調査を行った全国建設労働組合総連合の奈良統一書記長。中には「1か月に最大28日間、働き続けた人もいた」という。特に過酷なのは、新国立競技場と選手村。しかし、同労組が、新国立競技場の建設に当たっているJSC(日本スポーツ振興センター)の通報窓口に申し立てても、労働者本人ではないとの理由で受理されないという。

厚生労働省は今年3月に開催された「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会大会施設工事安全衛生対策協議会」で、新国立競技場や有明体操競技場、大井ホッケー競技場、カヌー・スラローム会場、オリンピックアクアティクスセンター、有明アリーナ、有明テニスの森、海の森水上競技場、夢の島アーチェリー会場、選手村の10の競技場の労災状況を公表した。

大会施設工事における災害の発生状況(2016.7.29~2018.12.31まで)
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000493347.pdf
第6回「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会 大会施設工事安全衛生対策協議会」配布資料より

それによると、死亡し労災が認められた2件のうち1件は、2017年3月に、新国立競技場の建設にあたっていた下請け会社の若手作業員が過労自殺したケース。もう一件は、昨年1月に、選手村建設に当たっていた作業員が、荷下ろしのクレーン誘導を行なっていたところ、別のクレーンと作業台の間に挟まれ死亡したケースだという。昨年12月に選手村で転落死した1人は、遺族が労災申請を行なっていない。

また8日以上休むような大けが等をしたケースは10件。4日から7日休業したケースは4件で、例えば仮置きされた部材の玉掛け作業を行なっていたところ、クレーンが途中で巻き上げ作業を行なってしまったため部材が倒れて足が挟まれたケースや、2階の梁上で作業を行なっていたところ転落したケース。部材と地面の隙間から可燃ガスが吹き出し、溶断作業をしていた作業員が火災に巻き込まれたケースなど、生命に直結すような危険な事故が多数置きていた。労災事故の頻度も平均的な工事現場よりも高いという。

大会施設工事における労働災害(休業4日以上)の概要

第6回「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会 大会施設工事安全衛生対策協議会」配布資料より

調査にあたった奈良さんは、まもなく竣工を迎える今の時期こそ、もっとも工事現場での事故が発生する恐れがあると指摘する。工期が迫る中、現場に慣れない新たな業者や労働者が多数投入されるためだという。竣工予定は、新国立競技場が今年11月末。選手村は今年12月。これからの半年こそ、労働環境の改善が重要だという。

「東京五輪の闇」国際建設林業労働組合連盟(BWI)が発表した報告書
https://www.bwint.org/cms/news-72/bwi-report-demands-active-trade-union-role-in-tokyo-2020-olympics-1406

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