脱原発に向けて政策提言を行うシンクタンク「原子力市民委員会」が15日に発足し、都内で記者会見を開いた。吉岡斉委員(元政府原発事故調査委員会)は、国の原子力政策を批判。「これからは住民の意見を汲み取っていかなければならない」と訴えた。委員会では来年3月までに、脱原子力政策大綱をまとめ、原子力規制委員会や復興庁など関係機関に提言を行う。
原子力市民委員会は、科学者や元原発設計者、弁護士、NGOなど11名から構成される。被災者支援、使用済核燃料・核廃棄物の管理・処分、原子力規制や脱原発に向けた具体的な行程などを議論する4つの部会を設ける。事務局となるNPO法人 高木仁三郎市民科学基金が金銭面でサポートする。
会見の冒頭で河合弘之弁護士(高木基金代表理事)は「『脱原発』の退潮を感じる今こそ、寄せられた寄付金で高い見地に基づいた情報発信をする必要を感じた」と会の設立の経緯について述べた。
井野博満委員(東京大学名誉教授)は、「原発を止めてきたのは市民の力。今後は全体的な展望を作っていくことが大事。そこにこの委員会の役割がある」と説明した。また、福島からの参加となる荒木田岳委員(福島大学准教授)は、「福島では今この瞬間も、人びとが被ばくし続けている。この事態を変えていきたい」と訴えた。
「原子力委員会の議論の内容と政策決定の手続きに大きな疑問を持ってきた」と不満を露わにしたのは、舩橋晴俊委員(法政大学社会学部教授)。「改善すべき点がある。規制委員会がやってこなかった議論と手続きをこの委員会でやっていきたい」と力を込めた。
原子力市民委員会メンバー
荒木田岳(福島大学行政政策学類准教授)
井野博満(東京大学名誉教授)
大島堅一(立命館大学国際関係学部教授)
大沼淳一(元愛知県環境調査センター主任研究員)
海渡雄一(弁護士、脱原発弁護団全国連絡会 共同代表)
後藤政志(元東芝 原発設計技術者)
島薗 進(上智大学神学部教授)
舩橋晴俊(法政大学社会学部教授)
満田夏花(国際環境NGO FoE Japan 理事)
武藤類子(福島原発告訴団団長)
吉岡 斉(九州大学副学長、元政府原発事故調査委員会委員)
アドバイザー
アイリーン・美緒子・スミス(グリーン・アクション代表)
鮎川ゆりか(千葉商科大学政策情報学部教授)
飯田哲也(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長)
植田和弘(京都大学大学院経済学研究科長経済学部長)
上原公子(元国立市長、脱原発をめざす首長会議)
枝廣淳子(幸せ経済社会研究所代表)
大林ミカ(自然エネルギー財団ディレクター)
小澤祥司(飯舘村放射能エコロジー研究会世話人)
金子 勝(慶應義塾大学経済学部教授)
河口真理子(社会的責任投資フォーラム代表理事・事務局長)
崎山比早子(元放射線医学総合研究所主任研究官、元国会事故調査委員会委員)
長谷川公一(東北大学大学院文学研究科教授)
フィリップ・ワイト(アデレード大学)
吉野裕之(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク)
吉原 毅(城南信用金庫理事長)
米本昌平(総合研究大学院大学教授)