原子力規制委員会が12日、東京電力福島第1原子力発電所事故後、立ち入りが制限されてきた帰還困難区域の避難指示解除に向け、内閣府などが示した放射線防護対策案を了承した。対策の中心は、個人線量計による被ばく管理。また、計測によって得られた被ばく線量などのデータを研究者が活用できるようにする。
帰還困難区域は、事故後の放射線量が年間50ミリシーベルトを越えた高線量地域で、福島県の大熊町、双葉町、浪江町、富岡町、葛尾村、飯館村の6町村にまたがる。事故当初は、帰還は不可能としていたが、昨年、福島復興再生特措法の改正で、住民の帰還を促進する地域する地域に方針を転換した。全ての自治体で先月までに、再び人が住めるように整備する「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」の除染や整備に着手している。
避難解除に向けて示された対策は、個人線量計を身につけて線量を把握し、相談体制を整備するほか、地域の詳細な線量マップを作り、提供するなど。これまで設置されていたバリケードは撤去し、立ち入りの規制も緩和する。
個人線量を研究に活用へ
個人線量をめぐっては、伊達市民のデータを行政が個人情報審査会の判断なく研究者に提供したり、研究者が不同意の住民のデータを利用していた事実が判明。伊達市が調査員会設置へ動いているが、今回の防護策では、自治体ごとに配布した個人線量データを研究者が広く活用できるよう、事前に研究同意書を取得する仕組みも整備する。
政府は、五輪が開催される2012年3月末までに、現在不通となっているJR常磐線は区間を全線再開する計画で、双葉町の双葉駅、大熊町の大野駅、富岡町の夜ノ森駅周辺の復興拠点の先行解除し、23年春までに全ての復興拠点で避難指示を解除する。政府は年内に原子力災害対策本部会合を開き、帰還困難区域の避難指示解除の要件を示す。
空間線量年20ミリの解除要件を見直しか
政府は東京電力福島第一原子力発電所事故後、避難開始解除をする際、「空間線量率で推定された年間積算線量が20ミリシーベルト以下になることが確実であること 」が一つの要件とされてきたが、今回、先行解除する地域は毎時7マイクロシーベルト程度あり、空間線量ではなく、個人線量を解除基準とするなど、要件が見直される可能性もある。
双葉町
解除時期:2020年3月までに双葉駅周辺の一部 22年春までに全域
居住人口の目標:約2,000人
復興再生拠点区域のマップ(双葉町作成)
大熊町
解除時期:2020年3月までに大野駅周辺の一部 22年春までに全域
居住人口の目標:約2,000人
復興再生拠点区域のマップ(大熊町作成)
富岡町
解除時期:2020年3月までに夜ノ森駅周辺の一部 23年春までに全域
居住人口の目標:約1,600人
復興再生拠点区域のマップ(富岡町作成)
浪江町
解除時期:2023年3月
居住人口の目標:約1,500人
復興再生拠点区域のマップ(浪江町作成)
特定復興再生拠点区域における放射線防護対策に関する骨子案及び調査結果
http://www.nsr.go.jp/data/000254389.pdf
特定復興再生拠点区域復興再生計画(復興庁)
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/saiseikyoten/20170913162153.html