小児甲状腺がん
2015/09/29 - 10:13

甲状腺がんの「被ばく影響研究」メンバーに祖父江氏

福島県が、8月31日の第19回「県民健康調査」検討委員会の席上で公表した「放射線被ばくの影響に関する調査研究」の研究メンバーに、甲状腺検査の縮小を求めてきた大阪大学の祖父江友孝教授らが参加していることがOurPlanetTVの取材でわかった。同研究の報告書は年度内に公表を目指している。

「放射線被ばくの影響に関する調査研究」は、 5月18日に開催された第 19 回検討委員会で、甲状腺検査評価部会が提出した「中間取りまとめ」を受けて設置されたもの。福島県では、想定よりも多くの甲状腺がんが診断されているものの、これまで疫学的な分析は実施していなかった。このため、福島県から福島県立医科大学への委託事業の一環として、放射線被ばくの影響を確認するための調査研究 に取り組む。

現在は行われているのは「甲状腺腫瘍の進展モデルを用いた甲状腺健診「悪性および悪性疑い」数の推定に関する研究」だ。研究責任者の安村教授によると、甲状腺がんの患者のデータ(国立がん研究センター)を用いて、甲状腺がんの自然史(どのような育ち方をするか)についての進展モデルを作った上で、そのモデルを用いた推計結果を、福島県「県民健康調査」甲状腺検査の先行検査で見つかった甲状腺がんの発見数(113例)と比較検討することで、「福島県で見つかっている小児甲状腺がんの発見数の多寡を評価する。」という。

研究班のリーダーは福島県立医科大学で安村誠司教授(公衆衛生)で、福島県立医大からは大平哲也教授(疫学)、大津留晶教授(放射線健康管理学)、鈴木悟教授(甲状腺内分泌)、高橋秀人教授(放射線医学県民健康センター)、緑川早苗准教授(放射線健康管理学)の6人がが参加。さらに外部から、大阪大学の祖父江友孝教授、名古屋大学の高橋邦彦教授、放射線影響研究所の小笹晃太郎疫学部長の疫学研究者3人が参画している。このほか、県立医大の石川徹夫教授(放射線物理学)がオブザーバー参加する。

外部から参加する大阪大学の祖父江友孝教授は、環境省に設置されていた「福島第一原発に伴う住民の健康管理のあり方を考える専門家委員会」の委員だった当時、甲状腺エコー検査には「不利益が多い」として、検査の見直しや縮小を強く主張してきた経緯がある。「甲状腺検査には意味ない」と発言してきた研究者が参加することで、2016年4月から始まる3巡目で、大きな検査離れを生む恐れがある。研究班は、2ヶ月に1回程度の頻度で研究会を開き、2015年度内での成果の公表を目指しているが、研究結果によっては、さらに住民の不信感が高まる可能性も否めない。

「放射線被ばくの影響に関する調査研究について 」(福島県県民健康調査課)
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/129307.pdf

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