東京電力福島第一原子力事故後、福島県伊達市住民の被曝線量を分析した論文に、同意のない住民のデータが使われていた問題で、市が福島県立医科大学に研究を依頼する文書に、事実とは異なる記述があることことが、OurPlanetTVの取材で分かった。日付を改ざんした疑いがあり、市は来月設置される調査委員会に報告する。
問題となっているのは、早野龍五東京大名誉教授と宮崎真福島県立医大講師は2016年と17年にかけて、国際的な科学雑誌に投稿した2本の論文。仁志田昇司市長(当時)が作成した福島医大理事長と宮崎氏宛の研究依頼文書が住民データの提供の根拠となっている。
文書には、「受検者の住所情報をGIS(地理情報システム)に準拠させ、さらにGIS情報を国が行なっている航空機による放射線モニタリングのメッシュ(約300メートル)に合致させたものをそれぞれ突合して、データべースを構築した」として、これを有効活用し、「研究論文として世界に発信として欲しいと依頼している。
しかし、市は事実と異なると説明。GISデータの作成は早野氏に依頼しており、市は保有していないとという。データは早野氏から宮崎氏へ直接渡されたかどうかを含め、今後、調査で明らかにしていきたいと述べた。文書は、半澤隆宏市長直轄理事(当時)の指示で作成された。
(左)宮崎氏が11月頃に職員から受け取ったという依頼文書(右)宮崎氏宛の文書と同時に、宮崎氏が受け取ったという理事長宛依頼文書。宮崎氏が廃棄したため、福島医大には存在しない。ともにクリックすると拡大
文書の日付も改ざんか
さらに、「平成27年8月1日」との文書の日付についても、8月1日が土曜日であることなどから、改ざんの疑いがでている。伊達市と宮崎氏の打ち合わせ議事録によると、宮崎氏が論文執筆に向け、データ使用を認める公文書の作成を伊達市に依頼しているのは同月25日。同文書を受け取ったのは11月頃だとして、8月ではなかったことを認めている。
文書は、福島医大理事長宛てと宮崎氏宛の2種類が存在するが、福島医大では理事長宛の文書が確認されていない。福島医大によると、理事長宛の文書は、宮崎氏が自分宛の文書と同時に受け取り、理事長に見せたのち、個人の判断で廃棄したという。宮崎氏宛の文書は倫理委員会に提出する研究計画書に添付され、研究を行う根拠とされている。
2015年8月25日の打ち合わせ議事録の一部(クリックするとPDF全体がダウンロードできます)