福島第一原発事故
2019/01/19 - 19:58

1年半前「同意のみ使用」確認〜宮崎・早野論文問題

東京電力福島第一原子力事故後の被曝線量をめぐり、早野龍五東大名誉教授と福島医大の宮崎真講師の執筆した論文に、研究に同意していない住民のデータが使われていた問題で、研究を依頼した伊達市の担当者が1年以上も前、宮崎氏に「同意」について確認していたことが18日、分かった。著者らは、「同意なし」のデータを使っていたことを知ったのは昨年12月と主張しており、伊達市の記録と食い違いが生じている。

住民の情報公開で「同意」も確認
伊達市が「同意」について確認をしたのは、2017年4月24日。伊達市健康福祉部健康推進課の職員3人と論文著者で、市政アドバイザーの福島県立医科大学の宮崎真氏が面会し、データ提供の流れや中身について約1時間にわたり確認した。同席した職員によると、論文に使ったデータについても触れ、「同意データのみを使用した」と確認したという。

打ち合わせの記録は、伊達市の公文書に残っており、議事録には「データについては、論文作成時に宮崎先生が「同意あり」のみを使用」などと記載されている。当時、宮崎氏の口からこの点についての異論や疑問はなかったという。

2017年4月24日の会議の議事録。「同意」に関する記録が残っている

この打ち合わせは、論文の著者である宮崎氏と早野龍五東京大学名誉教授にどのようなデータが提供されたのか、伊達市民が伊達市へ対して情報公開請求したことを受けて急遽開かれたもの。市が著者らにデータを提供した2015年当時の職員が全て異動していた上、データ内容を確認できる文書が存在しなかったため、宮崎氏と面会してデータ提供の流れを確認する必要があったという。

この打ち合わせ後、市が住民に開示した資料には、住民の個人情報や線量データに加え、「同意書」の欄があり、同意の有無が明記されていた。

伊達市住民が「論文著者に提供されたデータ」を開示請求し、開示されたデータ(同意の部分を拡大)

OurPlanet-TVの取材に対し福島医大は、「宮崎講師が伊達市の方と打合せをしたのは事実だが、伊達市が持つデータ項目の確認だった。」として、「研究同意」に関する確認があったことは否定。論文に使用したデータの中に、「不同意」のものが含まれているということについては、昨年2018年12月14日の報道で初めて知ったとしている。

宮崎氏が倫理委員会に提出した研究計画書には、研究対象の条件に「同意書」を取得した住民と記載していたが、論文では、ガラスバッジを返却した全住民約5万9000人分のデータを解析。「同意」をしていなかった2万7000人のデータも使用していた。2017年9月、この論文で博士号を取得した。

宮崎氏は2015年1月に伊達市から委嘱を受け、健康管理に関わる市政アドバイザーに就任。ガラスバッジ計測結果の全体像を把握する立場にあり、健康推進課との間で月1回、定例の打ち合せを開き、線量の高い住民の対応などを市へアドバイスしていた。

2015年11月2日に宮崎氏が福島医大の倫理員会に提出した研究計画書(クリックすると研究計画を参照可能)


伊達市から提供されたデータ(クリックすると、データの項目が確認できます)

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