小児甲状腺がん
2018/10/26 - 19:36

被曝量と甲状腺がんの関係を検討へ〜福島県

原発事故当時18歳以下だった子どもを対象に行われている福島県の甲状腺検査をめぐり、検査結果を評価している第11回目「甲状腺評価部会」が開かれ、次回以降、被曝と甲状腺がんとの関係を検討することが決まった。

解析を行うのは、国連科学委員会(UNSCEAR)が2013年に公表した市町村別の甲状腺被曝線量と福島の県民健康調査で見つかっている甲状腺がんの数との関係。UNSCEARが推計している市町村別データをもとに線量ごとのグループを作り、甲状腺がんの数との関係を検討する。次回にデータを公表し、来年11月までの報告書をまとめる。

2巡目の解析は実施せず〜当初計画は断念へ?
チェルノブイリでは、事故後4年以降に甲状腺がんが増えたとして、福島県の甲状腺検査では、2011年から13年にかけて実施しrた1回目の検査を「先行検査」と位置づけ、2巡目以降のデータと比較する予定だった。しかし、2015年3月に1巡目のデータをもとに「中間とりまとめ」を公表したまま、2年以上の間、2巡目に関する解析も新たな分析も実施していない。

鈴木元部会長は、新たな解析が必要との姿勢を示す一方、1巡目と2巡目を比較する「輪切りの研究はしない」と明言。1巡目と2巡目の甲状腺がんの数を積算したうえで、UNSCEARが公表している市町村別の甲状腺被曝線量と照合し、「Dose-Respons(線量ー効果)」関係に基づいて被曝影響を確認していくとの考えを示した。市町村の人口の差が大きいことから、線量ごとにグループなどを作って比較するという。



UNSCEAR2013が公表した1歳児の市町村別甲状腺等価線量推計値と県民健康調査mp状腺がん悪性疑い例を比較した表(作成:OurPlanet-TV)クリックすると拡大します。
※放医研シナリオにおいて、複数の避難シナリオがある市町村は低いデータを利用した。
※市町村の色はピンク:避難区域、オレンジ:浜通り、青:中通り、緑:会津


被曝線量推計による地域分け。(UNSCEARデータをもとにOurPlanetTVが作成)

「同意書」や「学校検診」をめぐる激論
この日の部会では、ほかに学校検診や検査を受ける際のインフォームドコンセントをめぐり、委員同士で激しく意見が対立。甲状腺検査は「過剰診断を招いている」と指摘する大阪大学の高野徹委員や祖父江友孝委員が、検査の有害性をきちんと数字で示すべきとの考えに対し、神奈川予防医学協会の吉田明委員や、帝京大学ちば総合医療センターの南谷幹史委員など甲状腺の臨床医が反発し、「死亡率ではなく、QOLをあげることが大切」「そのまま放置すれば危険」といった意見が相次いだ。

また高野委員が海外の論文をもとに、米国では、超音波検査ではなく触診が推奨されていると主張すると、鈴木部会長が「文献の読み方にバイアスがかかっているのではないか」とチクリ。南谷委員は「触診は甲状腺を専門とする医師でないと難しい。超音波は侵襲性が低く、これほど適切なものはない」と述べると、伊藤病院の加藤良平委員は「この検査を一般のがん検査と比較するのが間違っている。チェルノブイリで甲状腺がんが多いことを背景にスタートした。将来の子どもたちをどうにかしたいと思ってやっている。子どもの甲状腺がんのフォローアップデータはほとんとない。大人の甲状腺がんとは分けて考えるべき」と指摘した。

配布資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-b11.html

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