復興庁が今年3月に刊行した冊子「放射線のホント」で、放射性セシウムの基準値を「日本は世界で最も厳しいレベル」と記載していることについて、市民団体が表記の問題を指摘したところ、食品基準を担当している厚生労働省が誤りを認めた。今後、政府内で見直しに向け検討する。
問題となったのは、風評被害を払拭する目的で、復興庁が今年3月に策定した小冊子「放射線のホント」。放射線問題に取り組む市民グループ「放射線被ばくを学習する会」のメンバーらが9日、23〜24ページに掲載されている食品と飲料水のデータの扱いに誤りがあると指摘。飲料水の米国の基準は、1キロあたり4・2ベクレル、EUでは8.7ベクレルで、日本の10ベクレルより低いにも関わらず、「世界で最も厳しい基準を設定している」との記述は誤りであるととして訂正を求めた。
また復興庁が過去に作成した資料の中には、米国の食品基準値を1000ベクレルとしたものや、1200ベクレルとしているものなど、年度によって変動があると指摘。出典をきちんと表記するよう対応を求めた。復興庁のデータのもとになっている消費者庁が作成した「食品中の放射性物質に関する広報資料」についても、諸外国のデータは「緊急時」の規制値と比較しているため、日本と同じ「平時」のデータで統一するよう、表現の変更を求めた。
食品の基準値を定めている厚生労働省は、国際比較に誤りが生じた原因は、放射性セシウムの基準値を2012年に、緊急時「暫定基準値」から現在の基準に改定した後も、海外のデータは変更せず、「緊急時」のデータをそのまま掲載してしまったためと釈明。飲料水の基準については誤りを認め、今後、誤解を生まない記載となるよう検討すると回答した。また基準値超えの食品がほとんどなくなっていることを受け、今後、食品で100ベクレル、飲料水で10ベクレルとなっている現在の食品基準を低下させていく可能性もあると述べた。
一方、復興庁は「放射線のホント」の誤りを明確には認めなかったが、政府内で表記を統一する方向で検討すると回答した。同冊子は、昨年12月に政府が策定した「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」の一環として、放射線に関する正しい知識の情報発信等を強化する目的で約5000部印刷し、自治体などに配布している。しかし、放射線被曝のリスクに関して、問題のある表現が多数あるとして、多方面から批判が上がっている。
食品中の放射性物質の新たな基準値ー厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf
食品中の放射性物質に関する広報資料ー消費者庁作成
http://www.caa.go.jp/disaster/earthquake/understanding_food_and_radiation/material/
「放射線のホント」ー復興庁作成
http://www.fukko-pr.reconstruction.go.jp/2017/senryaku/pdf/0313houshasen_no_honto.pdf
米国EPA(環境保護庁)のSafe Drinking Water Act(水の基準を規制)
https://www.epa.gov/laws-regulations/summary-safe-drinking-water-act
EPAは、核種ごとの上限濃度を定めている (p16)
https://www.epa.gov/sites/production/files/2015-06/documents/compliance-radionuclidesindw.pdf