環境省は28日、東京電力福島第1原子力発電所事故で発生した放射性物質のうち、1キログラム8000ベクレル以上の「指定廃棄物」をめぐり、茨城県内における処理の方針を決める「市町村長会議」を水戸市で開いた。環境省は、県内で1カ所の最終処分場建設を目指す方針を示してきたが、会議では「1カ所集中は難しい」との異論が続出。分散して「現状管理」することも視野に入れ、指定廃棄物を一時保管している14市町村のみの会議を開催しすることが決まった。
国はこれまで、放射線物質汚染対処特措法の基本方針を受け、茨城、宮城、栃木、千葉、群馬の5県で、指定廃棄物の最終処分場を各県に1カ所建設する方針を掲げてきた。しかし、今日公表された処分に関するアンケート調査によると、茨城県全44市町村のうち半数の22自治体が1カ所での集中管理ではなく、分散して保管を続けるべきと回答。また、指定廃棄物を一時保管している14自治体の中でも、「1カ所の施設設置」を支持したのは6自治体、7自治体が分散しての現地保管を継続すべきと回答した。
指定廃棄物を一時保管しているつくばみらい市の片庭正雄市長は、「環境省の方針通りで、1カ所にやるべきだと思う。理想は1カ所にしていただきたい」「現状保管するとなると、頑強な建物を作るためのお金がでるのか。かつて1カ所でなくともっと費用がかかる」などと述べたが、高萩市や日立市、北茨城市の市長が相次いで、「現状保管」を主張。2012年9月に候補地として名前があげられた高萩市の小田木真代市長は、「国が最終処分場に選定したときの住民の反応は大変厳しいものだった」と吐露。「茨城県内にある全量ベクレルを一カ所に集めるために時間を要するよりは、一時保管している場所の安全確保することが一番重要。フレコンパックもだいぶ痛んでいる。適正な管理をしてほしい。」と訴えた。
また日立市の古成明市長も「県内1カ所で建設するのは難しい。そこの住民の理解を得ることは無理だろう。分散させればリスク分散にもなる。放射性物質は確実に減衰して半分に減ってきている。8000ベクレルを下回っているものは、一般の破棄物として処分したい。」などと述べた。さらに北茨城市の豊田稔市長からは、「まず原点に戻ると、まず重要なのは住民の安心のため早く結論を出すこと。」「時間を費やさないで早く結論を出すために指定廃棄物を一時保管している14市町村が議論すべき。国が責任を持つのは当たり前の話。それぞれの首長が選挙になるんですから、このことが問題になって首長は全員落選するという厳しい意見もある」と統一地方選を意識した意見が出された。
豊田市長はすぐにでも14市町村長の会合を開催するべきだと主張したが、橋本茨城県知事が、市長が欠席している自治体もあるとして、後日の開催を提案。環境省側も分散しての「現状管理」や14市町村による会合について同意をし、別途開催する方向が確認された。
環境省は新年度予算で、指定廃棄物の最終処分場を引き受ける5つの県に対し、計50億の地域振興予算を確保し、基金化する方針を固めている。しかし、同方針もあくまでも1カ所での集中管理の場合に限ったものだとして、14カ所に分散した場合にどのような振興策を取るかといった点なども今後の検討課題となる。
会議終了後の会見で、小里泰弘環境副大臣は「現地保管も排除しない」と明言。栃木や宮城との間にダブルスタンダードがあるのではないかとの指摘に対しては「茨城県は一時保管場所が15カ所と少なく、クリーンセンターなど公的な場所で安定的に保管されているという特有の事情がある」「量も少なく、濃度も低い」と述べ、他の自治体との違いがあるとの考えを示した。橋本昌知事は廃棄物の保管状況の悪化を懸念、「できるだけ早く結論を出すことが大事だ」と述べた。
環境省によると、茨城県内の指定廃棄物約3,532トン(昨年12月末現在)。14市町の15カ所に一時保管されている。