東京都新宿区が、デモの出発地として利用できる公園の基準を見直し、現在の4ヵ所から1ヵ所に減らすこと決めた。区議会で報告が行われた27日、議会には、見直しに反対する傍聴者が殺到。区議会議員からも、方針を撤回する声が相次いだ。
議会ではまず、みどり公園課の依田治朗課長が、5月に決定した基準の見直し内容について報告。従来、デモの出発地として利用できる公園は、「100㎡以上の広場」があり、「住宅街に近接してない」ことが条件だったが、新たに、「商店街や学校に近接しない公園」という条件を追加。これにより、新宿中央公園以外の柏木公園、花園西公園、西戸山公園の3つの公園が使えなくなると説明した。近年、デモの件数が増え、騒音や交通規制などの問題から、周辺の商店会などからデモの制限を求める要望書が提出されていたという。
これに対し、区議からは「デモの過度な制限だ。表現の自由に抵触する」などの反対意見が相次いだ。共産党のあざみ民栄議院は、「今回のデモ規制は、憲法が保障する表現の自由に抵触する」と指摘。地域の人にヒアリングしたところ、ヘイトデモを規制してほしいという声はあったが、デモ全てを制限する意見はなかったとして、基準見直しの撤回を求めた。
また立憲民主党の小野裕次郎区議も、「まずヘイトデモを規制し、それでも苦情があれば対処すればいい。今回の進め方は乱暴すぎる」と区の進め方を批判した。
公園利用の基準は、条例で定めているわけではないため、議会に諮ることなく、部長決済だけで変更できる。今回、議会を通さずに変更が決定されたことについて、共産党の雨宮武彦区議も、「議会の軽視だ」と批判した。
批判が相次いだことに対し、みどり土木部の田中孝光部長は、「自分が住んでいる家の近くの公園に警察が3人、10人来るようなデモがあるのは嫌です」と持論を展開。区幹部の暴言に、傍聴席からはどよめきの声があがった。
この日、傍聴にかけつけたのは、区民やデモで新宿区の公園を利用してきた市民ら50人ほど。普段は数人程度しか傍聴者がいないという委員会室が、この日は人で溢れた。
新宿区職員の労働組合メンバー・屋代眞さんも、デモのできる公園が減るとの情報に危機感を募らせて、議会に足を運んだ一人。屋代さんは8年前から、最低賃金の引き上げを求めて、柏木公園を起点としたデモを呼びかけてきた。今回の基準見直しについて、「言論や自主的な市民活動を制限する暴挙だ」と憤慨する。
区民や区議からは批判が相次いだものの、区は予定通り、8月1日から新基準を適用する方針だ。
関連リンク
【市民団体が集めているWEB署名】
「新宿区の公園をこれまでどおりデモ出発地として使えるようにしてください」
https://www.change.org/p/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E6%95%91%E6%8F%B4%E4%BC%9A%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E6%9C%AC%E9%83%A8-%E6%96%B0%E5%AE%BF%E5%8C%BA%E3%81%AE%E5%85%AC%E5%9C%92%E3%82%92%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%A9%E3%81%8A%E3%82%8A%E3%83%87%E3%83%A2%E5%87%BA%E7%99%BA%E5%9C%B0%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E4%BD%BF%E3%81%88%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84