小児甲状腺がん
2018/09/04 - 13:04

甲状腺がん集計外含め211人〜福島県

福島第一原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」あり方を議論している検討委員会の第31回目会合が5日、福島市内で開催された。甲状腺検査は、穿刺細胞診を行って悪性あるいは悪性疑いがあると診断された患者は3人増えて202人(うち一人は良性結節)。手術を受けて、甲状腺がんと確定した患者は2人増えて164人となった。

また7月の甲状腺評価部会で公表された、検討委員会で報告されていない患者を含めると、事故当時18才以下だった子どもで、2011年秋以降に甲状腺がんと診断された患者は211人、手術をして甲状腺がんと確定した患者は175人となった。

福島県立医大以外での手術症例の把握せず
会議では、OurPlanetTVが8月3日の記事で指摘していた「他施設」の手術数が矛盾が生じている問題をめぐり説明があった。医大によると、甲状腺評価部会に提出していた2016年3月30日までの「手術の適応症例」において、福島県立医大で施行した手術としていた126例の中には、「2016年 4月に入ってから手術が実施された月に入ってから手術が実施された1例を組み入れてしまった」と修正。他施設で実施された数は7例であったと説明した。

また、2005年以降、福島県立医大以外の医療機関で実施された手術数が7例のまま変更がないことについて、甲状腺検査を担当する志村浩己教授は、「倫理上、把握は不可能」だとして、今後、他施設での甲状腺がんの把握は行わないとの見解を示した。

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これに対し、環境省の梅田珠実環境保健部長は、「甲状腺がんの把握について全体像がなかなか見えないのではないかということが気になっている。検討において透明性がいかに確保されているのかということが大事。」と指摘した上で、「他施設の手術症例については、難しいので集めないというのは初めて聞いた」「であれば、出来ないではなくて、全体像を把握するにはどうしたらいいのか、いろいろ工夫していただきたい」と述べた。

また広島大学原爆放射線医科学研究所の稲葉俊哉教授が、「検診から外れた、いわゆる漏れの症例について、検診に見つかった症例を単純に足すのは意味がないのでは。」「そもそも、この検討委員会は全体像を見る使命を帯びているのか。漏れを一例一例調べる必要はないのでは」との問いかけに対し、広島長崎における原爆被爆者の寿命調査(LSS)を行なっている放射線影響研究所の小笹晃太郎疫学部長は「そもそもスクリーニングに関しては、原発事故に関連して子どもの甲状腺がんが増えていのるかどうか、きちんと検証しなければならない。そこは、他の健康診断とは異なる」と前置きした上で、「(検査と検査の間に発見した)インターバルケースの症例や発見経緯が異なる症例は違いを書くのは当たり前で、全体像として把握していくことがまさに重要」だとの認識を示した。

この他、臨床心理士の成井香苗委員が、検討委員に寄せられている意見について、議論すべきではないかと問題提起したが、星北斗座長は、1週間前までに県の県民健康調査課に寄せられた書面は、委員に回覧することで足りているとして、議題として検討しないとの姿勢を示した。

記者会見では、他施設での把握を行わないとの報告や手術症例の報告書に誤りがあったことに対する質問が殺到。「他施設での把握をなくして良いのか」といった質問や、集計をダブルチェックしていないのかといった質問が相次いだ。

福島医大の担当者は、誤った手術症例は、臨床に当たっている鈴木眞一が頭った数字を作ってしまったとして、検査部門と異なることを強調。また他施設の症例把握は、検討委員会の議論を受けて、今後検討すると回答した。

星座長に反発強まる
検討委員会をめぐっては、傍聴者が県民から、星座長の議事進行や会見のあり方に疑問が上がっている。前回の会合でも、富田委員が「ここでの議論に違和感がある。当事者の生の声を聞くとい うことをやっていただきたい」と要望すると、星座長は「嫌みじゃないんでしょうけれども、 ご指摘として甘んじて受けますが、 ちょっとむかっときました」などと発言。また、記者会見でも度々「むかっとした」と返すなど、大人気ない態度が目についた。

これに対し、傍聴人や県民からは「座長の進行がひどい」「中立的に見えない。」との声が上がっている。「見ていてイライラする。安心を与える県民健康調査のはずが、座長がストレスを与えてる」などと言った反発のほか、回を重ねるごとに、「質疑統制」が露骨になっているとして、会見で記者の質問を遮ぎる様子を、「星のカーテン」と呼ぶ皮肉も聞こえる。

また、「新潮45」2018年8月号に掲載された甲状腺検査を特集した記事で、星座長が「する必要のない検査をして、それが結果として何ら利益をもたらさないのに発見して治療するというのは、疫学的に見れば過剰診断と言えるかもしれません。私自身は親の立場から、震災当時に中学生だった娘には、検査を受けなくていいと言っています。」と答えていることに対し、検査に責任をもつ座長としてふさわしくないと批判が上がっている。

資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-32.html

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