東京電力福島第1原発事故の健康影響を調べている福島県の「県民健康調査」の検討会が開かれ、甲状腺がんが悪性と診断された子どもが、疑い例も含め89人になったと報告された。
今回、公表されたのは3月31日までのデータで、原発事故当時18歳以下だった約29万人が検査対象となっている。
福島県内で甲状腺検査を実施している福島県立医科大の鈴木真一教授によると、1月から3月までの3ヶ月間に新たに甲状腺がんの手術を終え、甲状腺がんと確定されたのは17人で、計50人になった。甲状腺がんの疑いは39人になった。
地域別に見ると、平成23年に一次検査を行った地域(川俣、浪江、飯舘村、南相馬、伊達、
田村、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、葛尾など)では、44,766の検査対象者のうち87.9%にあたる41,981が1次検診を受診。0.5%にあたる218名が2次検査の
対象となり、穿刺細胞診で 15 人が悪性ないし悪性疑いと診断。これまでに13人が手術を終え、良性結節 1 人、乳頭癌 11 人、低分化癌疑い 1 人と確定した。
また平成24年度に一次検査を受けた地域(福島、二本松、本宮、大玉、郡山、桑折、国見、
天栄、白河、西郷、泉崎、三春、いわきの一部)は、検査対象者163,264人のうち、140,946人が1次検査を受診。この3ヶ月で新たに悪性または悪性疑いと診断を受けた子どもは4人増え、54件となった。最年少は事故当時6歳、現在8歳の女の子。
平成25年度は残る地域の1次検査を実施。157,621人の対象者のうち1次検査を受診したのは112,584人と1次検査受診率は71.4%。23年、24年より15ポイント以上低い。2次検査対象となった961人のうち、判断が確定した割合は82%と、まだ検査が続いている。現在の段階で、21人が細胞診で悪性または悪性疑いと診断され2人が手術を受け、ともに乳頭癌と確定している。
議論の中で、日本医科大で内分泌が専門の清水一雄名誉教授が、手術の方法について質問。身体の傷が目立ちにくい内視鏡の利用と保険適用について尋ねたところ、鈴木教授は、「子どもの甲状腺がんはリンパ節転移が多い」として内視鏡手術の導入には慎重な考えを示した。鈴木教授は、住民説明会で度々、「甲状腺がんは予後が良い」と説明しており、リンパ節転移や再発といった発言をするのは初めて。また、記者会見の中で、まだ手術を終えていない悪性疑いの39例のうち、2例を除き、37例は手術する見込みであることを明らかにした。
会見では、甲状腺がんの因果関係について質問が相次いだが、検討委員会の星北斗座長は、がんと診断された子どもの年齢がチェルノブイリより高いことや、発生頻度に地域差がないとして、「現時点では被曝の影響だとは考えにくい」と話した。
配布資料はこちら
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-15.htm…