施行から1年経っても、基本方針が策定されていない「子ども被災者支援法」をめぐり、同法律の立案に関わった国会議員らが26日、来年度予算に関して、関係省庁にヒヤリングを行った。復興庁の担当者は、同法案の基本方針策定が遅れている結果、来年度概算要求の内容は決まっておらず、資料も用意できない状況であると説明した。
関係省庁のヒヤリングを開催したのは、子ども被災者支援法の成立に関わった国会議員らでつくる「子ども被災者支援議員連盟」に所属する超党派の議員ら。冒頭で、会長に就任した民主党の荒井聡衆議院議員があいさつに立ち、「被災者が、行政の不作為だとして裁判に訴える事態になってしまった」と発言。同法に関連する来年度予算の概算要求内容をただした。
これに対し、復興庁の佐藤紀明参事官は、「現在、基本方針の策定に対し、政府としては全力投球している。いま、何月何日までとは言えないが、とにかく早く示せるように全力を尽くしている。その策定の中で、どのような施策が基本方針に盛り込まれてくるのか、示すことはできない。このため、資料は用意できなかった」と理解を求めた。
佐藤参事官の回答に対し、国会議員らからは「どの省庁も子ども支援法関連の概算要求はゼロなのか」「どの予算を基本方針に入れるのかを検討するのは順序が違う」「なぜ、基本方針の時期を明確にできないのか」など厳しい質問が相次いだが、佐藤参事官は「なるべく早くやる」「全力をあげている」「時期は言えない」という回答を繰り返した。
こうした堂々めぐりにしびれを切らしたのは、福島県田村市出身の荒井広幸参議院議員。同法の制定に関与した荒井議員は、法の趣旨が「低線量被曝の影響は科学的に解明されていない」ことを出発点にしていることを説明。ICRP(国際防護委員会)やIAEA(国際原子力機関)などでは、チェルノブイリの被害はわずかにしか認められていないが、2011年4月に発表されたウクライナ政府による国家報告書では、さまざまな疾病が記載されていると主張。「科学と政治がごっちゃになっているのだから、命を優先させるべき。晩発性障害が起きたら、だれが責任を取るのか」と行政担当者に強く迫った。
また、同法は、移住の権利を含めた自己決定権を尊重した、憲法に基づいた法律であることにも言及し、この法律を動かすことは、非常に大きな意味があることを力を込めた。
来年度予算の概算要求は今月末が締切り。議員からは、子ども被災者支援法の支援対象地域について複数のケースを想定し、その地域内で健康調査を行った場合に、それぞれどの程度の予算がかかるのかを算出するよう、要望が出された。