女性ジャーナリストらで作る市民団体が21日、メディアで働く女性記者らのセクハラ体験に関する調査結果を公表した。加害者として最も多かったのは、社内で40%、次いで社外関係者が29%、警察・検察12%と続いた。
調査を行ったのは、「メディアにおけるセクハラを考える会」。福田前財務事務次官のセクハラ問題を契機に設立した団体で、現役の新聞・通信、放送、ネットメディアの女性記者らが参加している。セクハラ被害の実態を解明するために4月下旬、大阪国際大学の谷口真由美大准教授がSNSでメディア関係者に実態調査を呼びかけたところ、10日間で35人から150件の事例が集まった。
調査結果によると、セクハラをした加害者として最も多かったのは、社内の上司や同僚で40%。次いでプロデューサーやクライアントなどが社外の関係者が29%、警察や検察関係者と続いた。また被害を受けた場所は、飲食店が25%と全体の4分の1を占めた。ついで職場が14%、番組放送中や取材現場が11%と続き、出張先(5%)、車中(5%)、自宅や相手宅(3%)、ホテル(1%)といった場所もあった。
狙われやすい20代
被害者の年齢は20代が51%が圧倒的に多く、30代が16%、40代が4%という結果となった。20代という入社間もない若い年齢の女性が被害を多く受けていることについて、会見を開いた代表の谷口真由美大阪国際大准教授は、若い女性記者が地方にいる時代に被害に遭いやすい傾向にあると指摘。警察 でのセクハラも多く、恒常的に猥褻な言葉を投げかけたりする例もあり、中には、うつ病を発症して退職した例もあると怒りをあらわにした。
紹介された事例には、地方支局で自治体の選挙を担当していた時、ある陣営の選対幹部方「票読みについて話すから、ご飯に行こう」と誘われ、車で男性の後をついて行ったら、山中で男性がいきなり車から出てきて、自分の車に乗り込み、胸を直に触り、キスをしてきたという内容も。女性記者は、地元紙の男性記者に電話で助けを求め、難を逃れたという。
また、人口2万5000人程度の小さな町に勤務していた地方紙の記者は、50代の役場幹部からしつこく飲みに誘われ、スナックで体を触られたり、「お前の裸が見たい」「裸で走れ」などと言われたと証言。被害を上司に申し出たものの、抗議などの対応はしてもらえなかったという。小さな町ゆえに、加害者である幹部に出くわすこともあり、嫌な記憶は消えず、取材活動に影響。数ヶ月後には胸痛が出始め、病院でPTSDと診断。過呼吸や不眠、パニック症状が出始め、原稿の出稿数が激減。内勤に異動したものの、フラッシュバックや抑うつ状態が続き、最終的には退職したという。
多数の女性から調査の協力を得られた背景について谷口准教授は「思い出すのもつらい苦しい事例を話してくれたのは後輩たちに同じ目にあわせたくないという気持ちによるもので、MeToo運動と同じ流れ」であるとの認識を示した。さらに財務省の福田前事務次官のセクハラ問題を契機に、匿名であれ、メディア内部で働く女性が声をあげることができるようになったのは、「分水嶺」だとした上で、日本でも、MeToo運動を再始動すべきと力を込めた。