1923年の関東大震災から94年となる1日、震災時に虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典が、東京都墨田区の横網町公園で開かれた。しかし、昨年まで続けられていた東京都知事と墨田区長からの追悼文が寄せられず、主催者や参列者からは落胆と怒りの声が上がった。
式典は「日朝協会」など市民団体でつくる「朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」が主催した。小池都知事が追悼文を寄せないという報道が出ると、実行委員会には問い合わせが倍増。式典には、例年の2倍となる約500人が集まり、黙祷と献花を行い追悼した。スピーチに立った榎本喜久治さんは、「6000人が殺されたなんて大げさだという声があるが、日本の歴史から記録をなくし、日本人の記憶を消す策動だ」と強い口調で批判した。
追悼文の送付の中止について、小池都知事は、同じ公園内で開かれる大法要で関東大震災の全犠牲者を追悼していると説明しているが、「朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」の宮川泰彦委員長は、朝鮮人の虐殺が官民一体で行われたことを指摘。「震災の被災ではなく、人の手で命が奪われた。追悼文がなく、極めて遺憾で怒りを感じる」と小池都知事を批判した。
一方で、数十メートル離れた場所では、「6000人の朝鮮人が虐殺されたことに根拠はない」とする女性団体「そよ風」が慰霊祭を開いたが、この主張に疑問を抱く市民らが近づき、主催者と口論となる場面もあった。
八王子から朝鮮人犠牲者追悼式にかけつけた中道さん(70代)は、「歴史を否定していく人たちがいて、都知事がそれに同調している。今の時代の危険さを感じる」と語った。