独立行政法人日本原子力研究開発機構は、9月6日、放射性物質が大量に放出した3月に、日々のどのようなプロセスで、関東及び東北地方に セシウム137が降下したのかを明らかにするための試算を行い、解析結果を公表した。
データは、世界版SPEEDI や気象庁アメダス、福島第一原発モニタリングカーなどを利用して
セシウム137の降下と積算沈着を予測、解析したもの。
セシウムの降下のプロセス
左図:1号機の水素爆発の頃に一時的に放出が増加と推定された放射性物質が、12 日午後から深夜にサイト北北西方向から宮城沿岸部に拡散・沈着した。
右図:14日中は北東の海上へ拡散した後、時計回りに向きを変えて 14 日夜間から 15 日朝にかけて南南西の茨城県方向に拡散した。
左図:南南西方向から時計回りに向きを変えながら関東、東北へ拡散。 高降下量地域は、主に2号機の圧力抑制室付近の爆発音以降に放出が増加したと推定される。また降雨によって、土壌に沈着したと考えられる。(福島市周辺及び宮城では予測結果は過大評価)
右図:20日の昼までは関東に拡散した後、北西方向へ拡散し、深夜 から再び南西の関東方向に拡散。関東地方では 20 日夜までの乾性沈着と 21 日朝からの湿 性沈着に起因して降下量が増加した。福島県東部は乾性沈着、宮城、山形及び岩手県では湿性沈着に起因した降下量の増加がある。
左図:関東地方全域に拡散し、降雨による湿性沈着で降下量が増加し た。
右図:22 日中は福島県、栃木県に拡散し、23 日朝は海上へ拡散。降雨による湿性沈着で降下量が増加した。
左図:海上からサイト北西方向に拡散した後、南東方向へと反時計周 りに向きを変えながら拡散し、降雨によって山形・福島・宮城県の県境を中心に湿性沈着に よる降下量の増加があった。
右図:太平洋上から内陸へと拡散し、福島・栃木県を通過中に降雨に よって降下した。千葉県での過大評価は、降水量の計算値の過大評価に起因する。なお、3月30 日のみ、文部科学省の「都道府県別環境放射能水準調査結果」と整合性をとるため、 放出率を調整している。
福島第一原子力発電所事故に伴う Cs137 の大気降下状況の試算
– 世界版 SPEEDI(WSPEEDI)を用いたシミュレーション –
http://nsed.jaea.go.jp/fukushima/data/20110906.pdf