東京電力福島第1原発事故の賠償の枠組みを検討している文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(会長・能見善久学習院大教授)は20日の会合で、自主避難に関するヒヤリングを実施し、自主避難者に幅広く補償する可能性を示唆した。また、避難しなかった人についても賠償の対象として検討する方針を確認した。次回の会合で方向性が示される。
会合では、福島市の瀬戸孝則市長を筆頭に、福島弁護士会の渡辺淑彦弁護士、子どもたちを放射能から守る福島ネットワークの代表・中手聖一さん、同ネットワークの宍戸隆子さんが、自主避難に関して報告をした。瀬戸市長は「福島市には、計画的避難区域の飯館村などよりも放射線量が高い地域がある」「避難した人と、避難したくてもできない家庭がある。放射能を不安に思う気持ちは(福島に)来てみないと分からない。」として、金銭的な理由などで避難できない人も、放射能に対する恐怖を感じながら生活しており、精神的な賠償の対象とすべきだと訴えた。
続いて、いわき市で弁護士事務所を開いている渡辺弁護士は、自ら家族を自主避難させている身として発言。普段の相談などに基づき、自主避難した人、とどまっている住民の苦境を訴えた。
最後に、子どもたちを放射能から守る福島ネットワークの中手聖一さんと宍戸隆子さんが意見を陳述。中手さんは、原発事故後、福島県民がどのような状況であったのか、また、どのような情報を得て判断をしたのか、自分の体験に基づいて話しました。その上で、4月22日という日付で自主避難の補償枠組みをわけることはできないと訴え、既存の法令(公衆の被ばく限度1ミリシーベルトなど)に判断の基準を求めるようになったな背景を説明した。
また、宍戸さんは、自主避難者にはシングルマザーも多く、必ずしも金銭に余裕がある人ばかりではないことを話すとともに、自主避難に対する賠償を認めることは、避難をすることの正当性に対する社会的な認知となることを訴えた。
能見会長は最後に「自主避難は、賠償しなければならない対象である。残っている人たちへの賠償も検討をしながら解決をはかっていきたい」と結論づけた。
1時間13分から福島市長
1時間40分から渡辺弁護士
2時間10分から中手さん
2時間25分から宍戸さん