明日2月20日、福島第一原発の現場が報道陣に公開される。しかし、昨年11月12日に引き続き、基本的にバスに乗ったままの取材となり、記者らの行動は厳しく制限される。インターネットメディア2社の同行が初めて許された一方で、フリーランスの記者は今回も同行できないこととなった。
福島第一原発構内の取材を行うのは、昨年11月12日以来今回が2度目となる。前回取材が可能だったのは、内閣記者会加盟社、福島県政クラブ、外国人特派員協会に加盟しているメディアの記者と映像と写真の代表取材のみ。フリーランスやインターネットメディアなどは対象から外された。
このため、「フリーランス連絡会」は、2回目以降の現地取材にはフリーランスやインターネットメディアを参加させるよう求めていたが、今回も、フリーランスは対象外となった。ただ、ニコニコ動画とIWJ(Independent Web Journal)の2社がネットメディアとして初めて取材を許された。上記2社の取材を認めた理由について、東京電力は、去年3月以降、東電の会見を取材してきた実績があるためとしている。
今回、取材が認められたのは、
(1)全国紙9人(朝日、産経、東京、日経、毎日、読売、共同、時事)
各社1名+代表スチール1名
(2)福島県の地元紙6人(福島民報、福島民友、河北新報)
東京電力の原発立地地域の新聞(東奥日報、新潟日報)の各社1名+代表スチール1名
(3)テレビの在京キー局8人(NHK、日テレ、TBS、フジ、テレビ朝日、テレビ東京)
各社1名+代表カメラ1名+音声1名
(4)福島県政クラブ加盟放送局7人(福島テレビ、福島中央テレビ、福島放送、テレビユー福島、ラジオ福島)
各社1名+代表カメラ+音声1名
(5)外国人特派員協会5人
加盟社代表2社+代表スチール1名+代表カメラ1名+音声1名
(6)インターネットメディア3人(ニコニコ動画、IWJ)
各社1名+各社カメラ1名
の以上38名。
一連の取材に関して、「フリーランス連絡会」の世話役を務めるフリージャーナリスト寺澤有氏に園田康博・内閣府大臣政務官から電話があったのは2月4日。寺澤氏によると、園田氏は、現地取材の決定が急だったため、フリーランスを参加させる時間的な調整ができなかったと話したという。
しかし、同4日の東京電力の会見に参加していたフリーライターの木野隆逸氏によると、大手マスコミ各社に公表されたのも同じ2月4日であり、同日の段階では、マスコミの取材概要も固まっていなかったという。調整の時間がなかったという園田氏の言い分つじつまがあわない。
同連絡会は、マスコミ各社に対して、福島第一原発内で取材した写真やビデオ素材を、取材に同行できないフリーランスに提供するよう公開の申し入れ書を送付したが、全国の新聞社・通信社34社が加盟している東京写真記者協会は、「在京8社はフリーランスに写真を提供するのはかまわないということだが、無償か有償かは各社に問い合わせてほしい」と口頭で回答。また共同通信社は、「今回は限られた時間で調整が不可能」なため「期待には添えない」「同原発内の資料に関しては、東京電力と交渉すべき」と文書で回答があったのみで、他の各社からの返答は2月19日現在届いていない。
公共性の極めて高い福島第一原発の取材であるにも関わらず、事故を起こした側である東京電力や当局側が、取材するメディアを選ぶ状態が継続している現状は重大な問題をはらんでいる。また、こうして得た映像や写真素材を、取材に参加できないメディアやフリーランスに対し、有償で販売するのだとしたら、極めて不当な行為と言わざるを得ない。国民の知る権利に答えるべく、無償で広く提供すべきものであろう。
申し入れを行った「フリーランス連絡会」は、去年10月、政府・東京電力統合対策室の合同記者会見へのオープン化を求めて発足したもので、現在30名程度のフリーランスが参加している。福島原発への同行取材に関する窓口にもなっており、フリーランスに対しての同行取材が可能となった場合は、連絡会に参加していない全てのフリーランスやネットメディアにも、広く呼びかけ、公正な方法で参加を決定するとしている。