東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能被害をめぐり、栃木県北部の住民らが、福島県民と同様の精神的賠償を求め、原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、同センターは21日、和解仲介手続きを打ち切ることを住民側に伝えた。弁護団によると、同センターが集団申し立てで仲介手続きの打ち切りをするのは極めて異例だという。
同センターは通知で「自主的避難等対象区域と比しても空間放射線量が低いとはいえない地点が存在している」などと放射能汚染被害の存在を認めながらも、「申立人全員に一律の賠償を認めるのは困難」と打ち切りの理由を説明した。
弁護団の尾谷恒治弁護団は「センターは、被害の存在を、那須地区に実質的に認めながら、被害者を救済する努力を怠った。それが一番問題だ」と批判。また、申し立て人で「栃木県北ADRを考える会」代表の西川峰城さんは航空機モニタリングの地図を示しながら「これだけ、栃木県に広域に面的な広がりがあることを全く認めていない」「いかにこの国が、この原発被害を福島県に閉じ込めたいのかということの表れだ」と憤った。
今回、仲裁が打ち切られた栃木県住民によるADRは、那須塩原市、那須町、大田原市3市の住民2266世帯7128人が参加する大規模な町が呼びかけて実施している浪江町の集団ADRを除くと最大規模となる。原発事故により、日常生活が一変したにも関わらず、「風評被害対策」など以外の賠償は一切、受けていないとして、福島県内の「自主的避難等対象地域」と同水準の賠償、総額約19億円を求めていた。弁護団は今後、再申し立てや民事訴訟も視野に、対応を検討する方針。東京電力が賠償をしてこなかった地域では唯一の集団申し立て。