東京電力福島第一原発事故で発生した放射性物質のうち、1キロ当たり8000ベクレルを超える指定廃棄物について、環境省は4日、茨城県の市町村長を集めて会議を開き、最終処分場を設けずに、現在の場所で分散管理を続けることをを認めた。環境省はこれまで、茨城県を含む5県に対し、各県1カ所ずつ最終処分場を建設して管理する方針を示していたが、「茨城は例外」だとして、政策を転換した。
第2回茨城県指定廃棄物一時保管市町長会議 資料など
http://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_other/ibaraki_gunma/conference_…
昨年4月に開催された第1回目の市茨城県指定廃棄物一時保管市町長会議から約1年。環境省は、県や市町村長が要望していた「分散管理」を認めた。会議の冒頭で、井上副大臣が「国としては各県1箇所集約の方針が望ましいが、地元の意向は最大限受け入れる」と挨拶すると、続いて環境省の担当者が、保管継続のための施設強化や8000ベクレルを下回る廃棄物の指定解除などについて、国の考えを説明した。
首長らからは、環境省が分散保管を認めたことについて前向きな意見が出た一方、指定廃棄物の解除については批判が相次いだ。環境省は、指定廃棄物を再測定して、8000ベクレルを下回ったものは、一般ゴミとして既存の処分場で処理できるとしているが、茨城町の小林宣夫町長は「当事者である国の責任回避に見える。今、保管されているものは、国が最後まで責任をもって欲しい」と発言。北茨城市長の豊田稔市長も「指定廃棄物の解除をして処分しても、反対運動が起きると思う。これからが大変。」と述べた。
終了後、茨城県の橋本昌知事は「安全を早期に確保するにはこの方法しかなかったのかな。(原発事故から)5年は時間が経ちすぎた、国はもっと早く対策を取るべきだった。」井上副大臣は「茨城は地元から現地保管の強い要望があった。他の県については、それぞれの県の意向を聞きながら前にすすめていきたい」と述べた。
「茨城だけ例外」~初の分散管理
環境省が、指定廃棄物の分散保管を容認するのは初めて。茨城県には、現在、焼却灰や汚泥、稲わらなど約3500トンの指定廃棄物が、14市町15カ所のクリーンセンターや下水処理場などに保管されていてきたが、引き続き、この場所で管理を続けることとなる。
昨年末の段階で、茨城県全体の指定廃棄物の量は3,643トン。そのうち、最も保管量が多いのは、日立市の1260トンにのぼる。一方、分量はさほど多くないものの、高いレベルの放射性廃棄物を管理しているために10年以上経っても、指定廃棄物を抱え続けることになるのは、牛久市、高萩市、取手市、守谷市の4市だ。
台風や水害、竜巻などの災害により、処分場で保管されている放射性廃棄物が外部へ拡散することが懸念されることから、今後は、環境省の費用で、コンクリートで遮蔽するなど、保管環境を強化する予定だ。また、それぞれの地元市町村で、住民説明会も開催する。
出口の見えない指定廃棄物処理
1キロあたり8000ベクレルを超える指定廃棄物の扱いは、2011年11月に閣議決定された「放射性物質汚染対処措置法」の基本方針で定められている。方針では、指定廃棄物の発生量が多い宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県は、1県に1カ所、国の費用で最終処分場を建設し、保管すると規定された。
そこで環境省は2012年、茨城県高萩市と栃木県矢板市と最終処分場の候補地として指名した。ところが住民が猛反発し、環境省は白紙撤回に追い込まれた。その後、各県で市町村長会を開催し、新たな候補地の選定する方法に変更。各県ごとに自治体の意向を尊重するという形式をとり、宮城県では加美町、栗原市、大和町の3市町を、栃木県は塩谷町を、千葉県は千葉市を候補地として選定した。
しかし、宮城県と栃木県の4市長は、昨年末に白紙撤回を要求。一方、千葉県については、東京電力の土地が保有している千葉市内の工業用地を候補地に挙げており、市は容認しているものの、住民が大規模な反対運動を展開しており、いずれも建設の見通しはたっていない。
「分散管理」否定から一転
分散保管をめぐっては、先月15日、一部のマスメディアが、環境省が分散保管を容認するとした内容を報道。環境省はこれを否定し、ホームページに「指定廃棄物の処理方針に関する報道について」と題する注記を掲載した。また、井上副大臣が栃木県知事と面会するなどして、火消しに走った。
しかし、結局は「茨城県は指定廃棄物の濃度が低く、量が少ない上、一定程度まとまって保管されている。」として、「茨城は例外である」との方針を打ち出した。茨城県の決定前に、栃木県塩屋町の住民は、環境省から4回目のダイレクトメールが届いた。書面には、「災害等に備えた長期にわたる保管を確実にするため、国が責任をもって、県内1ヶ所に長期管理施設を設置し、指定廃棄物を集約して管理することにしています」と記載されている。
政府で閣議決定された同じ基本方針のもとにありながら、県により対応に違いが出ている指定廃棄物処理の手法。大きな矛盾をかかえたまま、震災から、まもなく5年目をむかえようとしている。