福島第一原発事故
2016/01/19 - 15:53

汚染米「がれき撤去が原因」〜京大教授が南相馬で報告

2013年に南相馬市内で収穫された米から、国の基準値を超える放射性物質が検出された問題で、周辺地域で放射性物質のモニタリングを続けてきた京大大学院医学研究科環境衛生学分野の小泉昭夫教授は17日、東京電力福島第一原子力発電所で行われた同年夏のガレキ撤去による粉塵の拡散が原因であると結論づける研究結果を地元農家などに報告した。

小泉教授ら研究グループは、2012年夏から南相馬市内に大気中の放射性物質を計測できる機器を設置し、継続的にモニタリングを実施してきた。その計測結果から、東京電力が、ガレキ撤去によって原発作業員の身体に放射性物質が付着したと公表した2013年8月19日に、研究チームが設置した同機器においても、セシウムの付着が急激に上昇している事実を確認。また研究チームは、粉塵飛散事故におけるセシウム134と137の総放出量は、原子力規制員会の試算の3・1倍にのぼると推計。飛散した粉塵の粒子も規制委員会が想定しているよりも小さな4・9μmであり、このためより遠方に飛散したと説明している。

さらに、同日の気象条件などをもとに、粉じん飛散事故をコンピューターで再現した拡散モデルのシミュレーションを作成。この地図をもとに、翌2014年9月、南相馬市内の21カ所で土壌を採取して実証実験を行ったたところ、飛散が予想された原町区の太田神社周辺の3カ所で、ストロンチウムを検出した。このストロンチウムのセシウムとの比率は、原発近接地でしか観測されない高い値だったため、2011年の原発事故時に放出したものとは考えられず、事故後、原子炉近くにあった粒子が飛散した可能性が高いと結論づけた。

この問題では、農林水産省が独自の調査によって、粉じんが飛散した可能性を指摘していたが、原子力規制委員会が否定。その後、政府による調査は打ち切り状態となっており、原子力規制委の田中委員長が11月に南た相馬相馬市長と会談した際についても、「ガレキ撤去の影響ではない」と持論を展開していた。

これについて、小泉教授は、実証実験をせず、シュミレーションだけで結論を導いた原子力規制委員会と田中委員長の姿勢を批判。今回の研究成果は、査読を経て、国際学会誌「Environmental Science & Technology」に掲載されたと説明した上で、「この論文に反論するなら、田中委員長も国際学会誌に反論を投稿すべきだ」と述べた。さらに、住民と信頼関係を構築するためにはバイアスのない丁寧な手法をとるべきだ、現在の規制委員会の手法を厳しく批判した。

説明会配付資料
http://www.ourplanet-tv.org/files/20160117.pdf
論文
「Post-Accident Sporadic Releases of Airborne Radionuclides from the Fukushima Daiichi Power Plant SIte」(事故後の突発的に生じた福島第一原発からの放射線浮遊粉じんの放出)

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