東日本大震災の被災地で、建物解体や廃棄物処理の際に発生するアスベストの問題について、調査や提言活動を行っているNPO団体らが、今年4月の避難解除を目指している福島県の南相馬市小高区などで現地調査を行った。調査の様子を同行取材した。
小高区でアスベスト調査を行ったのは、長年じん肺などの労働問題に取り組んできた東京労働安全衛生センターなど市民団体のメンバーら。航空写真を手がかりに、アスベスト建材を利用している建物を特定した地図を事前に作成。それを手に、アスベスト建材を使用している家屋の状態や解体工事現場でアスベスト対策がどのように実施されているのかなどについて調査した。
解体家屋は半年で900棟の小高区
被災地域でのアスベスト調査をリードしてきた東京労働安全衛生センターの外山尚紀さんは、被災地での状況について「(アスベスト建材が使われている際にも)散水や防護などきちんと対策がとられていないケースが多く見られる。」と指摘。また短期間の間に多くの解体工事が集中しているため、人材不足が起きていることで、まったく現場経験のない労働者が増えているとしたうえで、「現場でアスベスト建材がどれかわからないということがおきている。労働者に対する教育を徹底する必要がある」と述べた。
南相馬市の小高区は、福島第一原発から20キロ圏内にあり、今年4月に避難指示の解除を目指している。被災家屋は国の費用で解体することになっているが、解体を希望している約900棟の工事は予定より大幅に遅れている。
「静かな時限爆弾」アスベスト
中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長の永倉冬史さんは、明らかにアスベスト建材を使用している家屋が想像以上に多かったと指摘。環境事務所は、建造物のアスベスト使用状況について、全体の把握に務めるべきだと提言する。
アスベスト(石綿)は、耐熱性や絶縁性、保湿性に優れることから、長年、建材などの使用されてきた。しかし、大気中に飛散したアスベストが人体に有害であることがわかり、日本では、1975年に吹き付けアスベストの使用が禁止となった。しかし、波形スレートといったアスベスト建材が全面禁止されたのは2004年で、比較的新しい家屋や工場においても使用されており、解体の際に飛散しないような防護対策や処理が必要となっている。
アスベストは、「静かな時限爆弾」などと呼ばれ、30年以上前にアスベスト含有製品に精算や建設作業に携わってきた労働者などが毎年5000人、新たに肺がんや中皮腫にかかっている。
東京労働安全衛生センターは2月28日に東京・全水道会館、3月21日に南相馬でそれぞれ、震災アスベスト調査の報告会を開催する予定だ。