日本軍「慰安婦」を題材にした写真展を、会場を運営するニコン側が一方的に中止したのは不当だとして、韓国人写真家・安世鴻(アン・セホン)さんがニコンに損害賠償を求めた裁判で25日、東京地裁の谷口園恵裁判長は「写真展中止決定に正当な理由があるとはいえない」としてニコンへ110万円の支払い命じた。
中止となった写真展は、2011年12月に安さんがニコンサロンの公募展に応募していたもので、審査会を経て、翌年1月に開催が決定。大阪での追加展も依頼されていた。しかし、インターネットの掲示板などに開催を非難する書き込みが殺到し、東京での開催直前にニコンが中止を通告。東京地裁が、ニコンに対し予定通り会場を使用させるよう命じる仮処分を出したため、開催にこぎつけたものの、ニコンはホームページに開催情報を掲載しないなど、協力を拒否。その後予定されていた大阪での開催は中止となった。
今回の判決では、インターネット上に開催を非難する書き込みがあっても、関係者の生命に危険が及ぶようなことが認められず、ニコンが安さんと協議することなく、開催を一方的に拒否したことは正当ではないとしている。
原告の安さんは「表現の場の重要性を認めてくれた。私たちの周辺には、慰安婦問題だけではなく、戦争、原発の問題がある。社会的な問題を発表したり、表現する場がつぶされていけば、被害は表現者だけではなく、それを見る人びと、皆にかえってくるものだ」と述べた。
代理人の李春熙弁護士は「公民館など公の施設では、表現の自由を守る事例があるが、その考え方を企業との契約にも及ぼしたものと評価する。簡単に中止だとか、自粛だとか表現の場が奪われる事例が続いているが、警鐘をならす判断になった」と分析した。
ニコンは「控訴は慎重に検討する」とコメントを発表した。
関連リンク
ニコン「慰安婦」写真展中止事件裁判支援の会
http://oshietenikon.net
重重プロジェクト
http://juju-project.net
安世鴻(写真家)
http://ahnsehong.com
関連番組
「Fotgazet通信・問われる表現の自由~ニコンサロン写真展中止事件」
ゲスト:安世鴻(写真家)綿井健陽(ビデオジャーナリスト、ビジュアルジャーナリスト協会会員)森住卓(フォトジャーナリスト、ビジュアルジャーナリスト協会会員)田島泰彦(上智大学教授)
http://bit.ly/LYfAVu