新国立競技場、総工費不明なまま見切り発車

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２０１９年のラグビーワールドカップおよび２０２０年のオリンピック・パラリンピックに向けて建設を予定している新国立競技場について、事業主体の日本スポーツ振興センター（ＪＳＣ）は７日、「国立競技場将来構想有識者会議」を開催。ザハ・ハディド氏のデザインを一部変更した設計案を了承した。専門家会議では、工事費用を２５２０億円と説明したが、その後の記者会見などで、可動席などが含まれていない事実が判明。総工費は３０００億円を上回る可能性も出てきた。

総工費は３,０００億超の可能性も
１年２ヶ月ぶりに開催された有識者会議。建設の難しさや建築コストの高さで、多数の建築家から批判ののぼっているザハ・ハディド氏の基本デザインは変更せず、部分的な「変更案」が了承された。デザインを選んだ選考委員会の委員長・建築家の安藤忠雄氏は欠席した。

今回発表された工事費用は、昨年５月の基本設計時の１,６２５億円から大きく膨らみ２,５２０億円。このほか、五輪後に追加される開閉指揮遮音装置（屋根の代替）に最低でも２５０億円かかるほか、２０１７年４月に消費税が１０％に上がることも考慮されていないため、最終的な総工費は未知数だ。

しかも、専門家会議後に改めて開催された記者会見で、可動式の観客席費用が含まれていないことが発覚。最低でも数十億がかかると見られ、総工費は最終的に３０００億円を上回る可能性もでてきた。

ＪＳＣが現段階で発表した２,５２０億円だけでも、当初の見積もりより１０００億円近くアップしている。これについて、ＪＳＣの鬼澤佳弘理事は、消費税のアップが４０億程度、東日本大震災などの影響による資材・労務費の高騰が３５０億、新国立競技場の特殊性に伴うものが７６５億と説明する。

しかし、キールアーチと呼ばれる流線型のデザインや設計は、昨年５月とは大きく変わっていない。鬼澤理事は、特殊な工法を行うため、その技術を持つ業者が国内にはわずかしかないと説明。そのために価格競争が働かず、コスト高になっている釈明した。

果たして間に合うのか
一方、工期については、昨年の段階で示されていた５１．５ヶ月より７．５ヶ月短い４４ヶ月で完成させると名言。今年１９月に工事に着手し、２０１９年の５月末には、開閉式遮音装置などを除く施設が完成するとした。

５００億円の費用負担を求められている東京都の舛添知事は、費用については一切触れず、「国、文科省、ＪＳＣの責任で間に合わせるようお願いする」と強調した。

会議の最後に、重大発言をしたのは、日本サッカー協会（JFA）名誉会長・小倉純二氏だ。小倉氏は、工期に間に合わせるために、１万５千席分の観客席を、簡易着脱式の可動席に変更したことに対し、「仮設の観客席では、ワールドカップサッカー会場の条件から外れる」と指摘。２０３０年以降の男子のワールドカップや２０１３年の女子ワールドカップに名乗りをあげたいが、可動式ならば不可能だとして、現状のプランを変更しなければ賛成できないと発言した。

これに対し、オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は、可動式でなければ、陸上のトラックができないと否定。しかし、日本スポーツ振興センターの河野一郎理事長は、「五輪後には必ず常設化したい。設計段階でも、工夫によって可能であれば、２０２０年を待つことなく鋭意検討する」
と矛盾する回答を述べた。

第6回国立競技場将来構想有識者会議の音声はこちらでお聞きいただけます。

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