福島第一原発電所事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑で告発され、東京地検が2度にわたり不起訴とした東京電力の勝俣恒久元会長(75)ら旧経営陣3人について、東京第5検察審査会は31日、「起訴すべき」だとする議決を公表した。今後、3人は強制起訴され、今回の原発事故ではじめて、法廷で刑事責任を問う裁判が争われることになる。
東京第五審査会は今回の議決において、東京電力は10メートルを超える大津波が発生する可能性を認識していたにも関わらず、コストを優先させて対策を講じなかったと認定。その結果、重大事故を起こし、多くの作業員や入院患を死傷させたとして、東京電力の勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長の3人を起訴とすべきと議決した。
3人を告発していたのは、原発被害者らでつくる福島原発告訴団約15,000人。2012年6月11日福島県民1,324人の福島県民が、当時の東電幹部や保安院幹部らを福島地検に告訴告発。同年11月には、13,262人が第二次告訴した。しかし、東京地検は13年9月、当時の東電幹部10人を「容疑不十分」、政府首脳を「容疑なし」とするなど全員を不起訴処分とした。
これに対し、告訴団は警察審査会に申し立てを行い、昨年7月、第5審査会は3人を「起訴相当」と議決。東京地検が再捜査したが、今年1月に再び不起訴としていた。告訴団は検察審査会へ2度目の申し立てを行い、今回の議決となった。
東京第五審査会の議決要旨
http://www.ourplanet-tv.org/files/20150731.pdf
審査会による今回起訴議決を受け、福島原発告訴団は以下の団長声明を公表した。
未だに11万人の避難者が自宅に戻ることができないでいるほどの甚大な被害を引き起こした原発事故。その刑事責任を問う裁判が開かれることを怒りと悲しみの中で切望してきた私たち被害者は、「ようやくここまで来た」という思いの中にいます。
この間、東電が大津波を予見していながら対策を怠ってきた事実が、次々に明らかになってきています。これらの証拠の数々をもってすれば、元幹部らの罪は明らかです。国民の代表である検察審査会の審査員の方々は、検察庁が不起訴とした処分は間違いであったと断じ、きちんと罪を問うべきだと判断したのです。今後、刑事裁判の中で事故の真実が明らかにされ、正当な裁きが下されることと信じています。
福島原発告訴団は、この事件のほかにも汚染水告発事件、2015年告訴事件によって原発事故の刑事責任を追及しています。事故を引き起こした者の刑事責任を問うことは、同じ悲劇が二度と繰り返されないよう未然に防ぐことや、私たちの命や健康が脅かされることなく当たり前に暮らす社会をつくることに繋がります。その実現のために、私たちは力を尽くしていきます。これからも変わらず暖かいご支援をどうぞ宜しくお願い致します。