東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能被害をめぐり、栃木県北部の住民らが15日、福島県内と同様の対応を求め、国の原子力損害賠償紛争解決センターに対し、集団ADR(裁判外紛争解決手続き)の和解仲介を申し立てた。東京電力が賠償をしてこなかった地域では、初の集団申し立てとなる。
申し立てたのは、那須塩原市、那須町、大田原市3市の住民2266世帯7128人。原発事故による放射能汚染を受け、日常生活が一変したにも関わらず、「風評被害対策」など以外の賠償は一切、受けていないとして、福島県福島市や郡山市など、「自主的避難等対象地域」と同水準の賠償を求めたもの。町が呼びかけて実施している浪江町の集団ADRを除くと、住民主体の申し立てでは最大規模となる。
弁護団長の尾谷恒治弁護士は、申し立て後の記者会見で「7000人を超える大規模な集団申し立てが、賠償をなされていない地域でなされたというのは、これまでの損害賠償が被害の実態を反映してこなかった証左だ」と、国と東電による賠償枠組みを批判。また、申し立て人のうち、3割にあたる2264が事故時18歳未満か事故後に生まれた子どもであることに大きな特徴があるとした上で、栃木県においては、福島県のような表土の削り取りによる除染が行われておらず、体系的な健康診断も実施されていないなど、被曝や健康不安を軽減する措置がまったく取られていないことが多くの子育て世代の参加につながったとの考えを示した。
今、本当のことを言わなければー
「未来のために、今、本当のことを言っておきたい。言わなければ何もなかったことにされてしまう」
申し立て人の一人、西川たり子さんはADRの申し立てに至った理由をこう述べた。「100人の子どもに汚染地図を見せ、「放射能汚染は県の境目で終わっていますか」と聞けば、子どもたちは「終わってないよ」と答えるでしょう。1000人に聞いても「終わっていない」と答えるでしょう。」と西川さん。「まるで裸の王様のような世界」だと、原発事故による放射能対策や賠償が、県境で線引きされている現状を批判した。