原子力規制委員会は10日、定例会合で、九州電力川内原発1、2号機が、福島第一原発事故後を受けて策定された新規制基準に「適合している」との審査書を了承した。昨年7月に新基準が施行されて以来、審査書が交付されたのは初めて。しかし、専門家ができないとしている「火山の予知」を前提にしているなど矛盾も多く、再稼働に反対する市民らは批判の声を強めている。
今日の定例会では、審査書案に対して、全国から寄せられた1万8千件近いパブリックコメント(意見募集)に対し、審査を担当している原子力規制庁 の市村知也安全規制管理官、小林勝安全規制管理官が回答。最も多かった火山噴火に関する意見に対しても、可能性は「十分小さい」などとして結論を変えず、30分程度で説明を終えた。その後、5人の委員から特に異論もなく、審査書は了承。傍聴席からは「きちんと議論してください」「不合格だ」などの怒号が飛んだ。
今後、再稼働に向けては、九州電力が、機器類などの安全性などを具体的に記載した「工事計画」と、運転管理体制などを確認する「保安規定」を提出し、規制委の認可を得る必要がある。九州電力は9月中の提出を目指しているが、審査には更に数ヶ月かかる見込みだ。「保安規定」の中には、火山の予知を行うために、新たに設置が必要とされるマグマを監視するシステムの整備も含まれる。
また残りの審査と並行して、地元の合意手続きが残る。周辺地域の住民からは、避難計画が不十分だと批判が強まっているため、経済産業省は、早期の再稼働を目指そうと、地元の避難計画作りの支援に向けて職員を派遣することにした。しかし、施設などで暮らす高齢者など「避難弱者」を屋内退避とする計画が示されるなど、避難問題をめぐり、避難家計画の前提が二転三転している。
鹿児島市の松永三重子さんは「今年、春に飯館村を視察した。美しい景色で家があるのに、誰もいない現実にショックを受けた。飯館村は原発から40キロ以上離れている。30キロ圏内だけ避難計画を立てるというのは、福島で起きた事故の教訓が生かされていない。」と憤る。また川内原発から10キロに住む馬場園征子さんは、「川内市内では、みんなおおっぴらには口に出せないけど、心ではみんな反対していると思います。アンケートでは7~8割が反対だと答えています。子どもたちの未来のために、絶対に再稼働を止めたいです」と涙をうるませた。
YouTube版 規制委が川内原発の「合格」判断~火山や避難おきざり」
https://www.youtube.com/watch?v=_0rIt-XvA04