東京電力福島第一原発事故で放出された放射性プルーム(放射性雲)をめぐり、2度にわたって関東・東北地方に広く拡散していった様子が、各地に設置されていた大気汚染の測定局で採取した試料を解析した結果、改めて確認された。
今回のデータは、PM2.5などによる大気汚染の状況を計測するために、全国の都道府県が設置している大気汚染監視システムのうち、福島県をはじめ、宮城県、岩手県、茨城県、千葉県など9都県の91地点にある測定局の測定用ろ紙に付着していた試料を解析したもの。事故直後の2011年3月12から23日にかけて大気中に拡散していたセシウム137と134の1時間ごとの濃度を調べた。
その結果、3月15日と21日をピークに、放射性プルームが東北南部や関東に向けて、幅広く拡散していたことが改めて確認されたほか、3月16日午前中、茨城県南東部沿岸地域と千葉県北東部沿岸地域でセシウム137の濃度が上昇していたことや、3月20日の12時以降、茨城県から関東中部、埼玉県北西部に放射性プルームが移動し、夜に山麓地帯に滞留していたことなど、新たな事象が分かった。同報告書では、日にち別に解析している。重要な部分を引用する(図も含む)。
◎東北地方南部の状況
(1) 福島県中通りでは、15日午後から夜にかけて放射性物質が運ばれ、そのピーク 時間は南部ほど早く、北部では夜になってからと、遅くなった。一方ピーク時の濃度は 北に行くにつれて低くなった。
(2) 宮城県南部から仙台市にかけて、3月15日の夜は、ほとんどのSPM測定地点で Cs-137濃度は検出されなかったが、1地点だけ検出下限値よりも少し大きかったので、 南寄りの風で宮城県南部にも放射性物質が運ばれたと考えられる。
(3) 一方、山形県のSPM測定地点では、3月15日の夜に空間線量率がわずかに増加した時期も含めて3月15-16日の期間中、Cs-137は検出されなかった。
◎関東における状況
(1) 3月15日の午前中に放射性物質が関東地方東部から関東地方中部あたりに到達した。
(2) これらの放射性物質は、午後には、東京都、埼玉県及び神奈川県の西部の山麓地帯まで運ばれた。
(3) 3月16日午前中、茨城県南東部沿岸地域と千葉県北東部沿岸地域で、北寄りの風が吹いていた午前中 の数時間、Cs-137濃度が上昇した。この事象は、これまでほとんど報告されていなかった。
◎東北南部の状況
(1) 福島県中通り北部では、3月20日の午後から放射性物質が到達しはじめ、その後、 夜から3月21日早朝にかけて、放射性物質濃度が最高となる時間は次第に南に移り、中 通り南部で最高となった時間は一番遅かった。また、浜通り北部では、夜に放射性物 質が通過した。
(2) 3月20日夜に、宮城県南部でCs-137濃度が検出下限値より高くなり、福島県北部か ら運ばれたと推測されたが、さらに北側の宮城県北部では検出されなかった。また、3 月21日の午前中、宮城県中部から南部にかけて、Cs-137濃度が高くなった。
◎関東地方の状況
(1) 3月20日の12時頃に、茨城県の鹿島灘から東寄りの風により放射性物質が沿岸地域 に運ばれ、その後、関東中部から埼玉県北西部に運ばれ、夜には山麓地帯に滞留した。ただし最高濃度は前述した3月15日より低かった。この事象も、これまでほとんど報告 されていなかった。
(2) 3月21日の午前中、北東風により、放射性物質が関東中部を通過した。この放射 性物質が到達したときに雨が降り始めたので、その一部は地上に沈着した。
(3) この放射性物質は、その後、吹き続けた北東風により東京湾を南下して相模湾上に 運ばれたと考えられる。
報告書では、更に多くの計測局のデータを解析し、放射性物質拡散の全体像を明らかにしていく必要があるとしている。なお、群馬と栃木はデータを破棄しているため、データが存在しない。
放射線濃度の高かった時間と濃度(Cs137と134合計)
新データをもとにOurPlanetTVが作成(単位はBq/m3・赤字は100Bq以上)
SPM捕集用ろ紙に付着した放射性核種分析報告書ー環境省
(宮城県、福島県、茨城、千葉(東葛)のデータ)
http://www.env.go.jp/air/rmcm/misc/attach/report-201303_main.pdf
浮遊粒子物質測定用テープろ紙の放射性物質による大気中放射性物質濃度把握事業ー規制庁
(岩手、東京、埼玉、千葉(東葛以外)のデータ)
http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/10000/9771/24/tape_1.pdf
浮遊粒子測定用テープろ紙の 放射性物質による大気中放射性物質濃度把握事業
http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/10000/9772/24/tape_2.pdf
大気中拡散モデルを用いたシミュレーションによる放射性物質の挙動解明事業
http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/10000/9770/view.html