福島第一原発事故
2013/04/17 - 20:08

東電賠償初の和解〜国の基準外で「避難の合理性」認める

東京電力福島第一原発事故後、福島県白河市から札幌に母子避難した世帯が、原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)に申立てていた損害賠償請求について17日、母親と代理人が記者会見し、同センターを通じて東電と和解したと発表した。時期や地域といった点で、これまで国の基準から切り捨てられていた自主避難世帯にとって、初の和解となる。

今回、ADRに申し立てをしていたのは、2011年7月に福島県白河市から札幌の母親と2人の子どもが避難したいわゆる母子避難家庭。夫は仕事の関係で今も白河市で生活している。今回の和解案により、東京電力は、2011年分の損害として、既に支払いが終わっている子どもたちへの慰謝料40万円のほかに、134万7190円を支払うことが決定した。賠償の内訳は、母親への慰謝料4万円に加え、避難交通費、家財道具購入費、二重生活に伴う生活費の負担増加分、父親による札幌訪問のための面会交通費、母親の離職に伴う減収分などで、白河市に残っている父親の慰謝料は認められなかった。

自主避難者に対する損害賠償に関しては、原発事故の賠償の枠組みを検討する国の原子力損害賠償紛争審査会が2011年12月に指針を示し、2011年4月22日より早い時期に避難したか、遅い時期に避難したかといった時期的な線引きと、郡山や福島などの「自主的避難等対象区域」の在住者かそうでないかといった地域的な線引きを設定。7月に白河市から避難したこの家庭は、その双方からこぼれていた。

今回の和解案について、福田弁護士は、「原発事故後、政府によって様々な線引きが行われて来たこの「自主的避難対象区域」ということで、郡山市と白河市の間に賠償に差が出て来てしまっている。今回の和解のより、その線引きが一つ打破することができた。より被害の実態に即した賠償が行われる一つのステップになって欲しい」と強調した。

また申立てた母親は「あそこの汚染があり、私たちは怖がって逃げる権利があるということを言いたかった。」とADRに申し立てた理由を説明。1年4ヶ月の間、ADRにたなざらしにされてきたADRを批判する一方、今回の和解案は「避難することは合理性があるんだということをはっきり認めたことだと思う」「避難を迷っている人にも避難の権利があることを伝えたい」と、今回の賠償の意義を語った。

今回、ADRが和解案を提示した背景について、福田弁護は「他の「自主的避難地域」と同等の線量の状況にあるとして、避難の合理性がある」とセンターより口頭で説明を受けたという。避難した家庭の白河市の自宅は、避難する直前の2011年7月21日、0.68μSv/hを計測。母親は、自宅周辺で日々計測したデータをADRに提出していた。

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