2012/12/19 - 10:09

新型の出生前診断〜産婦人科学会がパブコメ募集

11月13日に開催された日本産科婦人科学会のシンポジウムノーカット版
 
妊婦の血液を検査することで、胎児に染色体異常があるか判定できる新型の出生前診断。当初「99%の精度」とマスメディアで報道されたことによって、社会的な関心が高まりとともに、誤解も広がっている。その導入をどうするかー。日本産科婦人科学会は15日、指針案をまとめ、広く市民の声を集めようとパブリックコメントの募集を開始した。
 
出生前診断は、胎児の異常を「発見」することを目的に、妊娠中に実施される検査のことを指す。日本ではこれまで、胎児の様子を知る「超音波検診」のほか、血液で判断する「血清トリプルマーカーテスト」や羊水の代謝物を診断する「羊水検査」、絨毛を用いる「絨毛検査」が行われてきた。今回の新型の出生前診断は、血液だけで高い精度の診断が出来るとされており、「羊水検査」のように 流産の恐れがないとして、米国では、ビジネスとして広がっているとされる。
 
11月13日に日本産婦人科学会が主催したシンポジウムでは、様々な立場の関係者が登壇。日本ダウン症協会の玉井邦夫理事長は、検査がダウン症の子どもの中絶を加速させる恐れがあるとして「どういうDNAの人なら生まれてきていいのか」と批判。「ダウン症のことを説明する時、『残念ながらおなかの赤ちゃんは』という説明をしないでください」と訴えた。
 
人工妊娠中絶について定めている「母体保護法」では、「胎児の異常」を理由とした中絶は認めていない。しかし、実態としては、「羊水検査」をはじめとする出生前診断によって『染色体異常」を診断された親が、中絶を選ぶケースも少なくない。
 
今回、産科婦人科学会がまとめた指針案では、安易に命の選別が行われることのないよう、実施施設は、十分なカウンセリング体制のある施設に限るとした。また検査対象については、35歳以上の高齢妊娠や超音波検査などで胎児に染色体異常が疑われる妊婦に限るとしている。
 
昭和大学の調査などによると、女性の大半がこの技術を歓迎していると発表しているが、35歳以上の女性らでつくる「『ハイリスク』な女の声をとどける会 」は、「母児ともに不安定な時期に検査を行うことは、妊婦にとっては必ずしもメリットではない」との意見書を発表。同時に、先天異常のある子どものうち、出生前検査でわかる染色体異常は6~15%に過ぎない。」とした上で、「限られた障害のために妊娠継続をあきらめ胎児を失うこと」は妊婦のニーズではないとして、実施をするならば、カウンセリングなどにおいては、障害のある子どもを育てることに対して、十分な情報提供を行うことなどを求めている。
 
日本産科婦人科学会は、社会的な影響が大きいことから、公表した指針案に対し、一般からパブリックコメントの募集を開始した。締め切りは来年1月21日(月)午後5時まで。この意見募集を受け、来年3月の理事会で正式に指針を決定する予定だ。
 
日本産科婦人科学会 指針案
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20121217.html
日本遺伝看護学会
http://idenkango.com/16/_221docx.html
日本ダウン症協会意見書 
http://www.jdss.or.jp/info/index.html#info36
『ハイリスク』な女の声をとどける会 意見書
http://hrwomen2012.blogspot.jp/
SOSHIREN女(わたし)のからだから意見書
http://www.soshiren.org/
 

 

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