東京電力福島第1原発事故の後、酪農業を廃業せざるを得ず、将来を悲観して自殺した福島県相馬市の酪農業菅野重清さんの妻バネッサ・アボルドさんと息子2人が20日、東京都内で記者会見し、東電に約1億1千万円の損害賠償を求める訴訟を起こすと明らかにした。
会見に先立ち、3人は東電本店を訪れ、賠償に応じるよう申し入れた。バネッサさんは、夫が自死するに至った責任を認め、誠実に被害の賠償に応じるように求める要望書を、東京電力の向山稔浩福島本部原子力補償相談室副室長に手渡した。
菅野重清さんは、自宅の小屋で首をつった状態で見つかり、小屋の壁に白チョークで「原発さえなければ」「仕事する気力をなくしました」と記していた。遺族は、重清さんが原発事故で酪農を続けられなくなり、自殺に追い込まれたとして、1億1000万円余りの損害賠償を求め、来月にも東京電力を相手取って裁判を起こす方針だ。
家族の夢を奪われたと涙ながらに語るバネッサさん。菅野さん一家のこれまでの2年間は、3月2日から東京写真美術館で公開されるドキュメンタリー映画「わすれない ふくしま」の中でも描かれている。