「避難の権利」や「健康調査」などについて定めた議員立法「原発事故・子ども被災者支援法」の具体的な内容や方向性を定める「基本方針」。本来であれば1月に示されるはずだった策定スケジュールが、政権交代によって白紙となったことが明らかになった。
子ども被災者支援議連の国会議員らは19日、国会内で会合を開き、復興庁が15日に公表した「原発被災者支援パッケージ」について議論を行った。根本匠大臣が、同パッケージについて「子ども被災者支援法に必要な政策は盛り込んだ」と発言していることについて、議員らは「支援パッケージ」と「支援法の理念」とは全くことなると復興庁を追及。これに対して、復興庁の水野靖久参事官は「必要な政策はパッケージに盛り込んだ」と改めて強調した上で、「基本方針」の策定スケジュールについては一切話せないと述べた。
新規事業は帰還促進策が中心
15日に復興庁が公表した「支援パッケージ」なるもの。OurPlanetTVが調べたところ、ペッケージとして示された関連施策97のうち、これからの始まる事業(24年度補正予算と25年の当初予算事業)はわずかに7つで、「自主避難者への高速料金無料化」を除くと、「福島避難者帰還等就職支援事業(厚生労働省)」「地域の希望復活応援事業(復興庁)」「コミュニティ復活交付金(復興庁)」「子ども元気復活交付金(復興庁)」など、福島への帰還を促進する事業が目立つ。
また、内閣府の「少子高齢化・環境対応等復興モデル事業費補助金」「NPO等の運営力強化を通した復興支援事業」、厚生労働省の「被災者の心のケア支援事業」も、子ども被災者支援法の枠組みというよりは、東北の被災地全体の課題を解決を目指す政策だ。
更に「子ども被災者支援法」では、国の責任による「健康調査」を求めているが、それについての記載が全くない一方で、「秘密会」などで批判を浴びた福島県県民健康調査の実施主体である福島県立医科大のイメージ回復のための予算が組まれている。
被災者支援パッケージに「高校無償化」?
事業を一つひとつの内容を確認すると、更に不思議なことが見えてくる、例えば、「高校無償化」や「生活習慣病対策」など、全国一律で、従来から実施されている事業も含まれているのだ。このことについて復興庁の担当者は「何らかの形で関連すると思われるものは全て含めた」と歯切れが悪い。そして、「子ども被災者支援法の「基本方針」策定が進んでいないために、何もやっていないと思われないよう、パッケージ化した」とした上で、「このパッケージは、「基本方針」を代替する役割を果たすものだ」との考えを示した。
「基本方針」策定時期を明らかにできないことについて、水野参事官は、「基本方針を策定する際に定めなければならない「支援対象地域」の基準を決めるのが難しいということで、時間がかかっている。しかし、「基本方針」に定められている4つの項目のうち「支援対象地域」以外の項目は、全て、このパッケージに盛り込んだつもりだ。」と述べた。
民主党政権下では、去年の12月頃までには「基本方針」をまとめる方向だったが、政権交代によって、まったく見通しがたたなくなった。
以下は復興庁が示した「原発被災者支援パッケージをOurPlanetTVが独自に分類したもの
◎は25年度に予算化されているもの。×は予算が打ち切られたもの。
原子力災害による被災者支援施策パッケージ(復興庁 2013年3月15日公表)
http://www.reconstruction.go.jp/topics/post_174.html
根本匠復興大臣のコメント(2013年3月15日の記者会見)
http://www.reconstruction.go.jp/topics/25315_3.html
原子力災害による被災者支援施策パッケージに対する緊急声明
http://ow.ly/iZ9ZQ
原発事故子ども・被災者支援法法文(2012年6月27日成立)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H24/H24HO048.html
福島ふるさと復活プロジェクト(復興庁 2013年2月15日公表)
http://www.reconstruction.go.jp/topics/20130215_sokatsuhonbu_shiryo3.pdf