NHKの福地茂雄会長は4日の定例会見で、ネット同時配信の検討をしていると明らかにした。既に片山善博総務相などに「放送法の改正」を打診しているという。
http://mainichi.jp/enta/geinou/news/20101105ddm002200088000c.html
放送法の改正といえば、今国会でまさにその真っ最中である。5月にこのブログ「放送法改正はネット規制!? 」で書いた通り、インターネットを政府の規制下に置く可能性がある内容だ。
昨日から修正協議が行われ、私が把握しているのは、以下の通り
(1)NHK会長の経営委員会への参加・・・削除(自民の要求)
(2)NHK経営委員会の欠格事由・・・協議継続
*NHKの経営委員は放送機器などの会社の人はなれないのですが、その要件をめぐって
(3)クロスメディアの附則・・・削除(民主の要求)
(4)省令委任規定・・・協議継続(公明/社民が削除を要求)
(5)電波法76条要件削除・・・協議継続(社民)
※免許停止権限から、番組準則を除くよう求めている
5月にブログを書いた時は、あまり気に留めてなかったものの、今回、こりゃマズいと気がついたのは、公明党と社民党が削除を要求している(4)の省令委任の規定。
これは法律に書いてない規定を、省令で定められるというもので、これまでの放送法にはなかた内容だ。逆にいえば、放送法に定められてないものでも、省令=総務省の官僚内部で、どんどん細かい規定を定めることが可能になる。法律の改定案すら制定プロセスがここまで不透明なのに、省令で細則が規定可能になれば、総務省の権限が強化されることは想像に難くない。
更に、今日、驚いたのは、原口前総務大臣肝いりで付則になんとか盛り込んだ「クロスメディア規制の検討」が、民主党の要求によって削除されたことだ。果たして、民主党はどこまで官僚に丸め込まれるのか。あるいは、意図的にやっているのか。
思えば、民主党が2009年の政策INDEXに掲げたメディア政策は素晴らしいものだった。例えば、日本版FCC(メディア規制機関の政府からの独立化)やクロスオーナシップ規制、日本版フェアユースなど。どれをとっても、日本のメディア文化を大きく変える、意味のある政策だった。
民主党政策INDEX2009
現在、日本版FCCに関しては、「今後のICT分野における国民の権利保障等を考えるフォーラム」で議論されている。しかし、この会議も、原口大臣が退任後は、大臣も副大臣も欠席。形式的な会議になっているように見える。繰り返しになるが、日本のように放送局を国家が直接管理しているのは、北朝鮮や中国など、一部の国だけなのである。
冒頭のNHKの話に戻るが、日本の放送通信政策は、既存の放送局などの要求と、総務省の思惑との擦り合わせで全てが成り立っている。放送電波は公共の資源としてどう扱うべきか、民主主義のために放送局と政府の関係はどうあるべきか、公共放送は何のためにあるのか、受信料はなんのためにあるのか、などといった、本質的な議論は全く行われずに、「地方局が厳しいから出資率アップ」とか、「受信料収入が落ち込んでいるから、ネット配信でも受信料」とか、そういうことが平気でまかり通っている。
メディア政策はまだまだ関心が低いが、ネットを通じて、きちんと理解してくれる人が増えることを期待したい。