原子力規制庁は1日午後6時に記者会見を開き、日本原子力発電敦賀原発(福井県)の活断層調査をめぐり、公表前に原電に対して報告書案を渡したとして、名雪哲夫審議官を訓告処分にし、出身官庁の文部科学省に出向させたと発表した。
会見した規制庁の森本英香次長によると、名雪審議官は、1月22日に「儀礼上の挨拶」で訪問した原電の常務ほか2名計3名と執務室内で面会。その際、28日の敦賀原発敷地内の活断層評価会で公表する予定の報告書を渡したという。
今回の件が発覚したのは、翌日23日に本人が申し出たことによる。同日、同庁の池田克彦長官が譴責するとともに、担当している一切の職務から外す暫定措置をとり、事実関係の確認と人事的な手続きを経て、今日の発表になったと説明した。
森本次長は、今回の処分に関して、規制庁職員が1人で事業者と面会するのは内規違反だったためと説明。手渡した文書は、公開で議論されたものをまとめたものであり、国家公務員法の守秘義務違反にはあたらないとの認識を示した。規制庁としては、あくまでも、個人的な軽率な行為だったとして、書類を手渡した経緯の詳しい調査や原電側に対する聞き取りなどは行わないという。
記者会見では、1月24日の時点で、地震・津波担当審議官の担当替えがあったことについて取材をした記者が「体調不良のため」と説明されたこと指摘。原発の新基準の骨子を発表するタイミングが過ぎてから公表したのではないかと質したが、森本次長は、「その時点では、事実関係は確認されていなかったため」と釈明。タイミングを計った事実はないと回答した。
名雪審議官は、昨年9月の規制庁発足時から、地震・津波担当として各原発の活断層調査や基準作りに携わっており、「儀礼上の挨拶」として、度々原連の関係者と面会していた。25日より体調不良を理由に休んでおり、今日出勤し、処分されたという。
1月28日の評価会合では敦賀原発敷地内の断層を活断層と認定。原電は反論する見解を表明しているが、その準備に利用した可能性が高い。
【発表までの経緯】
1月22日 原電常務ら3人が、名雪氏へ「儀礼上の挨拶」との理由により執務室で面会。
名雪氏は、規制庁の内規で禁じられている単身での面会を行った上に、
公表されていない文書を手渡す。
文書を手渡した理由について、原電が要求したかどうかは不明なまま。
1月23日 名雪氏が、単身で原電に面会したことを報告。
池田長官が譴責(けんせき)。
名雪氏を、担当している一切の職務から外す暫定措置をとる。
幹部で聞き取り(誰がいつ聞き取りをしたかは不明)
1月24日 審議官ポストの担当替えに気づいた記者が、規制庁に理由を質問。
「体調上の理由」と回答される。
1月25日 この日より、名雪氏は「体調不良のため」出勤せず。
1月28日 敦賀原発敷地内の断層評価会で活断層と認定。
評価会合の直後に、原電が反論する見解を表明。
(1月30日 「原子力災害対策指針」の改定案公表。)
(1月31日 「原発新基準の骨子」を公表。)
2月1日 名雪氏出勤。訓告処分(文部科学省への出向)。
18時に緊急会見。
【原子力規制委員会】
2013年1月22日発表 敦賀発電所破砕帯調査に関する日本原電株式会社との面談について
http://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/201301.html
面談の概要(議事要旨)
http://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/data/20130122_01giji.pd…
手渡した資料
http://www.nsr.go.jp/disclosure/meeting_operator/data/20130122_01siryo.p…