原子力規制委員会の緊急被ばく医療に関する検討チームは、第2回目の会合を開催し、座長の中村佳代子原子力委員が、安定ヨウ素剤は汚染検査(スクリーニング)後に服用すべきとする規制委員会案を提示した。これに対して、メンバーの医師、専門家からは、そのような対応では、時間がかかり過ぎて機能しないなどとする異論が相次いだ。
中村委員が最初に示したのは原子力規制委員会で作成した「原子力災害時の医療対応の流れ」(案)。この案によると、ヨウ素剤の配布と服用は汚染検査の後と示されている。
この案に対し、国際医療福祉大学の鈴木元教授は、90年代の緊急被ばく医療のチャートをたたき台にしていると指摘。「これが(福島原発事故時に)上手く機能しなかったのは、汚染検査をするだけで半日一日かかってしまったから。このスキームは大規模災害では上手くいかない」とヨウ素剤服用は汚染検査の前に行うべきとの考えを示した。
また、国立大学法人広島大学 緊急被ばく医療推進センターの細井義夫氏は、福島原発事故時、いわき市で、市民がヨウ素剤を受け取るために屋外に並んた例をあげ、プルームが来た時には屋外で放射性物質を吸引してしまう危険性があると指摘。事前配布も考慮にいれるべきだと話した。
中村委員はあくまでも医師の判断主張
こうした主張に対し、規制委の中村委員は、あくまでもヨウ素剤は、医師の判断で服用すべきとの見解を展開。しかし、鈴木教授は、チェルノブイリ原発事故後のポーランドの事例を紹介。子ども1000万人と大人700万人に投与した結果、小児には副作用はほとんど見られておらず、大人も、5000人の2人の割合で、ヨウ素アレルギーがあり喘息がある人が喘息発作を起こしたと報告。また、新生児の場合は、過剰投与になったケースで、一過性の甲状腺機能低下症が現れたものの、タイミングや服薬量が適切であれば、必ずしも、常に医師の判断がなければならないというわけでないとの考えを示した。
これに対し、中村委員は、ヨウ素材服用が保護者の安心につながる面もあるとして、あくまでも精神的な効果を重視する考えを示した。
中村委員が座長を務める「緊急被ばく医療に関する検討チーム」は、有識者から緊急被ばく医療に対して意見を聴取し、12月末まで4回程度開催後、意見をまとめ、原子力災害対策指針に反映させることを目的としている。中村委員は、今日出た意見を反映させる方針だ。