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2017/11/27 - 07:46

ブラック企業大賞〜NHKなど9社をノミネート

従業員に対して過労やサービス残業を強いたり、パワーハラスメントや偽装請負や派遣差別を行ったりなどをしている「ブラック企業」の頂点を決めるブラック企業大賞。その第6回ノミネート企業に、NHKや大成建設、パナソニックなど計9社が選ばれた。ブラック企業大賞実行委員会の選考委員で、ブラック企業弁護団の佐々木亮弁護士は今年の傾向として、これまでは明らかになりにくかった過労死や過労自殺を告発する遺族が増え、それがノミネートにも反映させれていると述べた。

ブラック企業大賞2017 ノミネート企業
1、ゼリア新薬工業株式会社
2、株式会社いなげや
3、パナソニック株式会社
4、新潟市民病院
5、日本放送協会(NHK)
6、株式会社引越社・株式会社引越社関東・株式会社引越社関西
7、大成建設株式会社・三信建設工業株式会社
8、大和ハウス工業株式会社
9、ヤマト運輸株式会社

ノミネート理由

ゼリア薬品
康食品の製造販売を行っているゼリア新薬工業は、2013年4月にMR(医薬情報担当者)として入社した当時22歳の男性社員が、新人研修受講中の同年5月18日に自殺したことがノミネート理由とされた。亡くなった男性は講師によって、かつて吃音だったことやいじめを受けていたことを大勢の同期の前で告白させられるなどした結果、精神疾患を発症。言動に異常が見られるようになり自宅に帰された帰宅途中で自ら命を絶った。男性は亡くなる前「研修報告書」に、同僚らにいじめ体験を知られた際のショックについて書き記しており、中央労働基準監督署が労災と認定している。

いなげや
関東地方を中心に店舗展開するスーパーチェーン「いなげや」は、2014年5月25日、志木柏町店のチーフだった40代の男性社員が過労死したことがノミネート理由に挙げられた。男性は、勤務中に突然呂律が回らなくなりて救急入院した後、一週間後に仕事復帰したものの、3日後に店の駐車場で倒れ、意識が戻らないまま脳血栓により亡くなった。亡くなった男性の発症前4か月前の時間外労働は96時間35分、発症前の4カ月平均で75 時間だが、この店ではタイムカード打刻前後にもサービス残業が行われていた。いなげやでは2003年10月にも従業員が過労自殺し、のちに労災と認定されており、過労による死者が出たのは2度目となる。

パナソニック
国内最大手の総合電機メーカー・パナソニックは、2016年6月に富山工場に勤務する40代の男性社員が過労自殺したことによりノミネートされた。男性の残業時間は16年5月には100時間を超えており、砺波労働基準監督署により過労自殺と認定されている。これを機に行われた調査により、富山工場に勤務していた社員3人に月97~238 時間の違法な長時間残業をさせたとして、同社と同社幹部が労働基準法違反の容疑で書類送検されている。同社は、仕事と育児の両立支援で実績をあげている企業として厚生労働省から「プラチナくるみん」の認定を受け、税制優遇措置も受けていたが、これらの件で認定を取り消された。なおパナソニックでは福井市の工場に勤務していた2次下請け会社の社員も2015年にクモ膜下出血により死亡している。

新潟市民病院
新潟市民病院は、2016年1月、37歳女性研修医が、長時間勤務が続いたことで睡眠薬を服用して自殺したことでノミネートされた。女性の月平均残業時間は、電子カルテの操作記録をもとに算出した結果、もっとも長い月で251時間だった。女性は亡くなる直前、「気力がない」「病院に行きたくないし、人とも会いたくない」ともらし始めたという。女性の夫は、「病院による殺人に等しい」と語っている。今年5月、女性の自殺は長時間労働による過労が原因として労災認定された。

日本放送協会(NHK)
NHKは、2013年7月、当時31歳だった女性記者がうっ血性心不全で過労死したことを理由にノミネートされた。女性が亡くなる直前の1カ月間の残業は159時間37分。5月下旬からの1カ月間も146時間57分にものぼったとして、渋谷労基署は、女性の死因は長時間労働による過労が原因であるとして労災認定した。なお遺族側の調査では、亡くなる直前の残業時間は209時間とされている。労基署は都議選と参院選の取材で「深夜に及ぶ業務や十分な休日の確保もできない状況にあった」と認定。「相当の疲労の蓄積、恒常的な睡眠不足の状態であったことが推測される」としている。

引越社グループ
「アリさんマークの引越社」として知られる引越社グループは、労働組合に加入した男性への不当労働行為や、不法な様々なハラスメントを理由にノミネートされた。引越社は、労働組合に加入した営業社員をシュレッダー係に配転した上で懲戒解雇し、「罪状」などと記載した男性の顔写真を入りの書類(罪状ペーパー)を作成し、引越社グループの店舗に掲示。さらに、同様の文面を全従業員に送ったり、社内報にも掲載するなどした。今年8月、東京都労働委員会はこれらの行為は不当労働行為であると認定。また東京都労働委員会は、引越社グループが労組へ加入した従業員らに対し、労組からの脱退を促す行為をしたとして、これも不当労働行為であると認定した。引越社グループは「組合への勧誘は悪徳マルチ商法への勧誘が本当の目的」との張り紙などもしており、これらの行為は不法行為であるとして、名古屋地裁により50万円の支払を命じられている。

大成建設・三信建設工業
大成建設と三信建設工業は、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる「新国立競技場」の建設作業に従事していた23歳の新人男性社員が過労自殺したことでノミネートとなった。男性の自殺する前の1カ月の残業は約190 時間であったととして、新宿労働基準監督署は男性の自殺は長時間労働による過労が原因の労災であると認定した。この事件を機に、東京労働局は、「新国立競技場」の建設工事に関わる約760社を調査した結果、37社で違法な時間外労働が確認され、新宿労基署が是正勧告をした。新宿労基署は、元請けの大成建設にも、入退場記録を提供するなど下請け会社に労働時間の適切な把握を促すよう求め、行政指導を行った。

大和ハウス工業株式会社
国内最大の総合住宅メーカー・大和ハウス工業株式会社は、埼玉西支社に営業職として勤務していた20 代男性に違法な時間外労働をさせていたことでノミネートされた。同社は2011年にも労働時間の管理に関して是正勧告を受けており、それ以降は一定の時間になると消灯して社員を帰宅させるなどの長時間労働対策を実施していた。しかし大量の業務が課されていた男性は、住宅販売の営業をした後にも、住宅展示場の事務所や営業車内で隠れて深夜まで残業し、2015年5月には月109 時間に達していた。長時間労働の末うつ病になった男性は、翌年5月末、退職を余儀なくされた。

ヤマト運輸株式会社
国内最大手の宅配便業者・ヤマト運輸はは、度重なる労働基準法違反例を理由にノミネートされた。同社は昨年12月には、神奈川平川町支店のセールスドライバーに対して残業代の未払いなどがあったとして横浜北労働基準監督署から是正勧告を受けたほか、今年5 月には同社西宮支店のパート従業員の勤務時間改ざんと賃金の未払いがあったとして、西宮労働基準監督署から是正勧告を受けている。さらに9 月には、博多北支店のセールスドライバーに対し労使協定で定めた残業時間上限(1 月95時間)を超える月102時間の残業を違法にさせていたとして、法人としての同社と、同支店の幹部社員2人が労働基準法違反の疑いで福岡地検に書類送検されている。

ブラック企業大賞実行委員会では、11月27日(月)17時より12月23日の授賞式まで、市民によるウェブ投票も受け付けている。

ブラック企業大賞
http://blackcorpaward.blogspot.jp/


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