これまで来日の計画がありながら、入国がかなわなかったイタリアの政治哲学者アントニオ・ネグリ。公益財団法人国際文化会館の招聘で初の来日が実現し、5日、毎週金曜日に反原発抗議行動が行われている官邸前を訪れた。
アントニオ・ネグリ氏は、1933年イタリア生まれ。アウトノミア運動の指導者として知られていたが、1979年にテロを主導した嫌疑で逮捕・起訴された。その後、冤罪であることが明らかになったが、政治運動へ影響を与えた責任を問われる形で有罪とされた。裁判中に、イタリア議会選挙に獄中立候補し当選。不逮捕特権により釈放されたが、数か月後には特権を剥奪され、直後にフランスに逃亡した。亡命中のパリでは、パリ第8大学で教鞭を取るなど、活発な研究・執筆活動を続け、哲学者のジル・ドゥルーズやフェリックス・ガタリとの親交を深めた。しかし、1997年に自主的に帰国し、監獄に収監され、2003年に釈放となった。
デ・スピノザやカール・マルクスの研究で知られるネグリ氏は、マイケル・ハートとの共著『帝国』で、グローバル化が進む世界秩序の中の新たな覇権を「帝国」と定義。それに対抗し世界を変革し得る存在として、「マルチチュード」の概念を提唱し、ひとつの方向性を持つ勢力でありながら、多様性を失わない、脱中心的で、国境を越えた民衆のネットワーク的な運動の可能性を指摘している。
この日、官邸前の反原発抗議行動の現場に登場したネグリ氏は、まず、国会議事堂から官邸前のエリアを車で一周。その後、国会記者会館前で車を降りて官邸前まで歩き、抗議の様子を見て回った。更に、国会正門前まで歩き、ファミリーエリアの奥でドラム隊に遭遇。表情を緩めて、演奏や抗議行動をしばらく観察していた。抗議運動している人の中には、ネグリ氏を見つけ、サインを求めたり、Tシャツをプレゼントする人もいた。
ネグリ氏は、抗議行動の印象について「反原発に対する緊張感がありました。文化的な雰囲気も感じました。人数が少なくなったと聞きましたが、とにかく抗議を続けることが大事です」と話した。
アントニオ・ネグリ氏は明日13時から、日本学術会議の講堂で、来日を記念する初講演を行う。日本にもファンの多いネグリ氏あって、明日の講演は予約が殺到。抽選で漏れた人も多いため、OurPlanetTVでは、この模様をライブ配信する予定。
【ライブ配信】4月6日(土)13時~アントニオ・ネグリ講演会
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