福島第一原発事故
2021/02/26 - 14:02

放射線防護の考え方「年1ミリシーベルト」削除へ〜放射線審議会

放射線審議会は2月26日、原発事故などの復旧期に示す「目標値(参考レベル)」から、「年間1ミリシーベルト」という記述を削除することを決めた。放射線防護の基準等を定めている民間組織「ICRP(国際放射線防護委員会)」が今年1月公表した新たな勧告内容を反映させていくとして、今後、報告書を修正していく。

今回、記述を変更するのは、2019年1月に取りまとめた報告書「放射線防護の基本的考え方の整理-放射線審議会における対応」。報告書の中で、従来は、事故復旧期における「現存被曝状況」の参考レベルを「1-20 mSv(年間)のバンドの下方部分」と定め、代表的な値は「年間1mSv 」としてきたが、ICRPの勧告に合わせてこれを削除。 「1-20 mSvのバンドの下半分で、バンドの下端に向かって徐々に被ばく量を減らし、可能であればそれ以下である ことを目標とする」と変更する。

放射線審議会配布資料より

放射線防護をめぐってはICRPが2007年、チェルノブイリ原発事故の経験をもとに、「パブリケーション109」と「パブリケーション111」の2つの勧告を公表し、それぞれ事故直後の「緊急時」と復旧期の「現存被曝状況」の放射線防護基準を示していた。

しかし、日本政府が法律に取り入れる前に東京電力福島第一原発事故が発生。避難基準を年間20ミリと定める一方、除染目標を年間1ミリシーベルトと設定する矛盾した状況が続き、勧告を恣意的に運用していると批判を招いていた。

こうした中、ICRPは2014年、福島原発事故の経験を反映させるとして、新たな勧告を策定。今年1月、「パブリケーション146」という新たな勧告を公表した。この勧告では、緊急時と回復期について定めていた「パブリケーション109」と「パブリケーション111」という2つの勧告を統合。その上で、現存被曝状況における公衆の参考レベルについて 「1-20 mSvのバンドの下半分で、バンドの下端に向かって徐々に被ばく量を減らし、可能であればそれ以下である ことを目標とする」と設定。 参考レベルとして「年間1ミリシーベルト」という文字が消えた。

放射線審議会配布資料より

ICRPの新たな勧告に合わせて更新する「基本的考え方」は、福島原発事故後、各省庁にまたがって様々な基準が乱立したことなどを背景に、放射線審議会が政府内の統一的な基準を示したもの。法改正により、機能が強化された放射線審議会が、独自にまとめた初の報告書とされる。

「放射線防護の基本的考え方の整理-放射線審議会における対応」

https://www.nsr.go.jp/data/000216278.pdf

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