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「記者クラブ」を痛切に批判した舞台が受賞〜読売演劇大賞

投稿者: ourplanet 投稿日時: 金, 03/01/2019 - 05:51


 
菅義偉官房長官が、東京新聞記者の質問を拒否するなど、6年以上続いている安倍政権の下、ジャーナリズムや民主主義が危機的な状況に陥っている。こうした中、読売新聞主催の「第26回読売演劇大賞」で、記者クラブを痛切に批判した戯曲『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』が選考委員特別賞を受賞。28日に都内で開催さてた贈賞式では、権力に「忖度しない」演劇人たちの小気味良い挨拶が続いた。 
  
華やかな雰囲気に包まれた贈賞式。これからの活動が期待される新人に贈られる杉村春子賞の贈呈から始まった。プレゼンターは、昨年度、同賞を受賞した演出家で俳優のシライケイタさん。シライさんはのっけから「現在、この国の民主主義は瀕死の状態です。ジャーナリズムは死にました。そして、我々の自由と平和が侵されつつあります。そんな時代で、演劇だから出来ること。演劇にしかできないこと。演劇人が考え続けないといけないことっていうのは、本当に増えてきていると思います」と発言。表現者たちが集う会場は、心地よい緊張感に包まれた。
 
アワプラがモチーフの舞台が「選考委員特別賞」
続いては「選考委員特別賞」。受賞した二兎社は『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』は、まさにジャーナリズムの抱える問題を直球勝負で描いた作品だ。OurPlanet-TVが2012年に起こした「国会記者クラブ裁判」や森首相がいわゆる「神の国」発言をした際、官邸記者クラブ所属の記者が首相記者会見の指南書を作っていた事件などをモチーフにしている。
 

 
主役は、ビデオジャーナリストで、スタッフはわずか3人だというインターネット放送局「アワタイムズ」代表の伊原まひる(安田成美)だ。彼女が、国会記者会館の屋上に潜入し、官邸前のデモを撮影しようと待機していると、そこに全国紙の政治部記者で官邸キャップをしている及川悠紀夫(眞島秀和)と、次いで大手放送局の政治部記者・秋月友子解説委員(馬渕英里何)がやってくる。官邸クラブで見つけた総理宛の「指南書」をめぐり密会していたのだ。
 

「ザ・空気ver.2 誰も書いてはならぬ」の一場面(提供:二兎社)
 
「指南書」を発見したのは、政治部に配属されて間もない総理番記者・小林司(柳下大)だ。同社の論説委員で、総理や官房長官と癒着がささやかれる飯塚敏郎(松尾貴史)が「指南書」の犯人なのか。それぞれの思惑と葛藤の中、組織に縛られて身動きの取れない記者たちの姿と日本のジャーナリズムの抱える限界と悲劇をユーモアたっぷりに風刺する。
 
脚本・演出の永井愛さんはブロンズの像を手に、「この作品は、読売新聞としてはアウトだということはわかっています」と挨拶。「今回は、取材を通しいろいろな人にお会いしました。今、日本のメディアは政権との距離によって分断されていますが、その中でも奮闘している方がたくさんいらっしゃいます。そういった方々の存在に、今回も励まされました。またビデオジャーナリストの白石草さんからは貴重なお話をたくさんお伺いし、作品にイメージを与えていただきました」と脚本完成に至る背景を紹介した。
 

 
また同作で、優秀男優賞を受賞した松尾貴史さんは「私の役は、保守系全国紙の論説委員。このような場所に立ってよいものか、非常に心苦しいものがあるのですが、ジャーナリズムはまだ死んでいないかも」と笑いを誘った。
 

 
本作品は、第25回の最優秀演出家賞と優秀作品賞を受賞した二兎社の『ザ・空気』に続く作品として上演され、作品部門の第一次選考で、選考委員の圧倒的な支持を集めたが、投票委員100人の投票結果では1票差の次点。このため、選考委員の選ぶ特別賞として選出されることとなったという。
 
今回、大賞を手にしたのは、『チルドレン』や『母と暮せば』の演出をした栗山民也さん。栗山さんは、挨拶でベルリンの壁崩壊前後、物質的には貧しい東ドイツで、芝居に目を輝かせる演劇人に圧倒されたことを披露。「劇場はあらゆる真実と出会える場所である」と言われたとのエピソードを紹介し、「その言葉を信じながら、もうしばらくこの仕事に携わっていくことをお許しください」と語った。
 

(『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』の関係者に混じって記念撮影するOurPlanetTVの白石草(左))
  
読売演劇大賞(日本テレビ放送網後援)は、読売新聞が創刊120周年を迎えた1994年、記念事業として創設。日本の文化の一層の発展を願い、歌舞伎や能などの伝統演劇からミュージカル、商業演劇、新劇、小劇場演劇など、ジャンルを問わず、すぐれた舞台作品・演劇人を顕彰してきた。昨年1月から12月までに国内で上演された舞台作品から受賞作品が選ばれた。各賞の受賞作品・人は以下のとおり。
 

大賞・最優秀演出家賞:栗山民也(『チルドレン』『母と暮せば』の演出)
最優秀作品賞:『百年の秘密』(ナイロン100℃)
最優秀男優賞:岡本健一(『岸 リトラル』イスマイル『ヘンリー五世』ピストル)
最優秀女優賞:蒼井優(『アンチゴーヌ』アンチゴーヌ『スカイライト』キラ・ホリス)
最優秀スタッフ賞:上田大樹(『百年の秘密』『メタルマクベス』の映像)
杉村春子賞:松下洸平(『母と暮せば』福原浩二『スリル・ミー』私)
芸術栄誉賞:木村光一
選考委員特別賞:『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』(二兎社)
 
優秀作品賞
『夜、ナク、鳥』(オフィスコットーネ)
『岸 リトラル』(世田谷パブリックシアター)
『遺産』(劇団チョコレートケーキ)
優秀男優賞
松尾貴史(『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』)
松下洸平(『母と暮せば』、ホリプロ『スリル・ミー』)
山崎一(『シャンハイムーン』『父と暮せば』)
横田栄司(『ヘンリー五世』『The Silver Tassie 銀杯』)
優秀女優賞
犬山イヌコ(『百年の秘密』『修道女たち』)
草笛光子(『新・6週間のダンスレッスン』)
ソニン(『1789 バスティーユの恋人たち』『マリー・アントワネット』)
藤山直美(『おもろい女』)
優秀演出家賞
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(『百年の秘密』『修道女たち』)
瀬戸山美咲(『夜、ナク、鳥』『わたし、と戦争』)
永井愛(『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』)
野木萌葱(『731』、同『Nf3 Nf6』)
優秀スタッフ賞
板橋駿谷(『オイディプスREXXX』の作詞・ラップ指導)
井上正弘(『チルドレン』『豊饒の海』の音響)
小笠原純(『チルドレン』の照明)
朴勝哲(『スリル・ミー』のピアノ伴奏)

 
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関連リンク
二兎社
http://www.nitosha.net/
 



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