2018/05/18 - 15:54

急増する香りの被害、国会で初の訴え

 

消臭・香りブームの陰で、新たな健康被害が生まれている可能性が浮上している。日本消費者連盟が昨年夏、「香害(こうがい)110番」を実施し、香りに関する電話相談を受け付けたところ、北海道から沖縄まで全国22都道府県から65件の相談が寄せられた。22日、これらの被害を報告する初の緊急集会が国会内で開かれ、国に早急な対策を求めた。
 
電話相談でもっとも多かった原因は、2013年以上、急速に広がりを見せている香の強い柔軟仕上げ剤で43件と相談者の70%が被害を訴えた。ついで合成洗剤が15件、芳香剤が9件、香水と消臭除菌スプレーが各7件と続く。他人の衣服に付着した香りなどにより、頭痛やめまい、皮膚炎、喘息など様々な様々な症状が起きるため、電車に乗れない、買い物に行けない、職場に行けないなど、社会活動に大きな影響が生じている実態が報告された。
 
香の害は現在、原因物質が特定されていない。しかし、化学物質過敏症問題などに取り組む「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」の水野玲子さんは、海外の市民団体の調査により、国際香料協会の会員企業が使用している3000もの人工化学物質のうち約数が有害であったことが明らかになっていると報告。また除菌・柔軟成分にも、有害な物質が使用されている恐れがあると指摘した。さらに、近年は、長時間香を持続させるためにアロマカプセルという新たな技術が開発されており、そのアロマカプセルの皮膜剤の中に合成樹脂にも毒性物質が含まれている可能性もあるという。
 
「香害」の激しい被害の実情
集会では、香害の被害者も登壇。音楽教室を経営していた女性は、生徒の柔軟剤が原因で、香りの暴露により反応が出るようになり、仕事を辞めざるを得なかったという。以前は、香水や柔軟剤が好きで愛用していたが、現在はひどい時には、言葉が話せなくなったり、お金を支払うこともできなくなると訴えた。
 
埼玉県在住の70代の女性は、洗濯洗剤、柔軟剤、シャンプー、リンスなど強い香に暴露すると、咳、呼吸困難、めまい、関節痛、足の脱力などが起き、階段から転げ落ちることもあると証言。外出時には、帽子、マスク、長袖、サングラスを着用し、交通機関で座席に座る際は、アルミシートなどを敷かざると得ないという。
 
さらに、香の被害で小学校に通学できなくなった子をもつ母親の手紙も代読。小学校2年生の息子が香の充満する教室に通えない実情、学校の無理解により何の支援もなされず、追い詰めらている現実を訴えた。 
 

集会には、消費者庁や消費生活センター、厚生労働省、文部科学省、経済産業省と、香の被害に関係する4少将の担当者も出席。業界団体が安全と主張しているなどとして、具体的な対応策は示さなかった。香りの被害について連携している消費者団体等8団体は、今後、被害はさらに拡大する可能性があると指摘。国に対し、省庁をまたいだ連絡会議等を作り、具体的な対応を講じるよう求めた。

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