福島第一原発事故
2014/08/29 - 02:06

福島県「甲状腺がん検査」めぐり激論〜環境省専門家会議

東京電力福島第一原発事故に伴う住民の健康調査に関する健康影響を検討している専門家会議で27日、福島県の県民健康調査検討委員会の座長らが参考人として意見を述べ、全面的な国の支援をあおいだ。また、環境省は「健康調査に関する論点整理」を提示。しかし、論点が「福島県民健康調査」に絞られている上、内容があまりに簡素なため、傍聴者からは「これだけなのか?」と言った怒りの声があがった。

福島県民健康調査の見直し議論
「住民の健康管理」が会議設置の目的でありながら、過去9回にわたって、ひばく線量評価やリスク評価のみを議論してきた同会議。前回、委員から批判があがったことを受け、27日はまず佐藤礼子参事官補佐が、福島県で実施されている福島県民健康調査の結果や国の健診体勢を説明。この後、福島県立医大の放射線医学県民健康管理センター副センター長の安村誠二教授と県民健康調査検討委員会の星北斗座長のヒヤリングが行われた。

星座長は県の健康調査の回答率や受診率が低い一方で、「甲状腺検査の結果だけに注目が集まってしまっている。」と説明。「考え方を変えていく転機」ではないかと、座長による「中間まとめ」を24日に提示した背景を述べると、委員からは、、「過剰診断のおそれ」や「不安を与える」などの理由をあげ、甲状腺がん検査の継続に慎重な意見が相次いだ。

しかし、日本医師会の常任理事で小児科医の石川広巳医師はこれに反論。「私の立場としては、人数的にも増やす。住民に広くやっていただく。健診をもっと発展させるという方向で議論していいのか。」と切り込み、「過剰診断」との意見に対し、「利益、不利益というが、不安を抱えている住民ががん検診をやりたいなら、できるような体制をとるべきだ。不利益とは誰の不利益なのか」と批判した。

また福島県民健康調査の甲状腺評価部会の座長をつとめる日本医科大学の清水一雄教授も、「子どもの甲状腺癌は大人に比べアグレッシブ。 亡くならなくてもQOLが下がるケースもある」として、「過剰診断」との声に反発した。

健康調査は福島県内に限定か〜論点整理
会議では、最後に佐藤参事官補佐が、健康調査に関する論点整理が示された。しかし、内容的に福島県内の健康調査のみに論点が絞られ、県外の健診に対する健康項目や、被ばくによる健診項目についての検討も示されていないため、傍聴席からは驚きの声があがった。論点整理に対し、安村副センター長は、基金などの財政支援だけでなく、人材、ノウハウなどの実質的な国の支援を求めた。

同会議は、当初の会議の目的として、「福島近隣県を含め、国として健康管理の現状と課題を把握し、そのあり方を医学的な見地から専門的に検討する」とした上で、「原発事故子ども・被災者支援法」において、国は放射線による健康への影響に関する調査等に関し、必要な施策を講ずることとされていると記載。「線量把握・評価、健康管理、医療に関する施策のあり方等を専門的な観点から検討する」としていた。

次回の会合は9月22日(月)17時に環境省で開催される。

ノーカット版

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