福島第一原発事故
2014/08/12 - 12:53

チェルノブイリ「28年目の甲状腺がん」ウクライナ報告番外編

チェルノブイリ事故後、ウクライナ国内において、甲状腺の診断や治療に関して指導的な立場にを果たしてきた「ウクライナ国立代謝問題研究所」。事故当時0~18歳だった子どもの治療のほとんどがここで行われてきた。昨年11月に取材した際のビデオ報告を配信する。

同研究所は、クリニック部門と研究部門、ラジオセラピー部門で構成されており、クリニックのベッド数は175床。職員は600人で、所内には、甲状腺がんに特化したデータベースがある。

小児科・生殖器科
小児科は1歳から17歳の子どもが入院している。ベッド数は30床で、ベッドは常に満床だという。疾患はまちまちで、生殖異常や発育の遅れ、糖尿病や甲状腺異常など。患者の数は年々増えており、特に発育異常と糖尿病が増えているという。これらの生殖に与える影響は深刻で、1992年に生殖器科が設置された。

穿刺細胞診
30代か40代前半の若手の医師が、手際よく細胞診を行っていた。超音波を見ながら針を刺す超音波ガイド下甲状腺穿刺吸引細胞診だ。部屋の一角には顕微鏡を覗く技師がおり、その場で診断を下す。穿刺から診断までの時間は、1回わずか1分にも満たないスピードで実施している。甲状腺だけでなく、首の様々な器官全体を見ているという。

甲状腺手術
手術室は4室で16人の医師が担当している。1日8〜9人、週32~36人、年間900人の手術が行われているという。事故前、甲状腺がんのこどもは120万人に8人だったが、1990年には62人の子どもが甲状腺がんでがん登録されている。

放射線治療科
この病院では、甲状腺がんがリンパ節に転移した場合、アイソトープを利用した放射線ヨード治療を行っているが、その割合は25~30%だという。私たちが取材した時点で、放射線治療の病棟に入院している患者は12人だった。2回の治療となる10歳の子どももいた。その子は甲状腺がんを手術したもののリンパ節転移し、2度目の手術後、寛解に向けて治療をしていたが肺に遠隔転移してしまった。
放射線治療のバリシティバリ医師によると、いったんリンパ節に転移すると、4〜5回手術しなければならないケースもあるという。またこの病棟では、5年から7年の間に8〜15%の再発があるという。アイソトープの治療を受けた患者は放射線源になっているので近づけないため、監視カメラで確認し会話をしていた。

コホート研究
内分泌研究所では、1998年から米国の研究機関と協力し、事故当時0歳から18歳だった子ども15,800人を対象に継続的な調査を実施している。その結果、16年間に4分の1の人に甲状腺異常が認められ、そのうち177人が甲状腺がんになった。
検査では、内分泌の専門医がまず問診し、触診をしてから超音波検査をする。5ミリの結節が見つかれば、必ず穿刺細胞診を実施し、良性の場合は経過観察。悪性なら手術を実施する。最近は3~4ミリの結節でもガンのケースがあるという。
調査をはじめた1998年に36人が甲状腺がんと診断され、その後、2年おきに調査を行い、毎回25人程度、新たに甲状腺がんが発見されている。テレシェンコ副所長は「同じようにヨウ素を受けながら、事故直後に発症する人と、20年以上経ってから発症する人がいるのかは、専門家の間でも解明されていない。」と話す。

関連動画
「甲状腺がんが転移」息子を亡くしたウクライナの父
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1629

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